100年後を想像して今のM&Aを考えるデュポン

入山:すごく納得出来るのは、欧米の良い会社、例えばデュポンは、100年委員会というのが社内にあるんですよ。それで毎年、トップクラスの人たちが集まって、「100年後の世界」ってどうなるかというのを、有識者を集めて真剣に議論するんです。そして、そこから逆算して今、何をするかを考える。デュポンってどうもM&Aのポートフォリオを、そんなところから考えているらしいんですね。

 それは、経営学的に言うと幅広い「知の探索」を可能にしていることです。永守さんはそれと似たことをご自身の頭の中でやっているわけですね。30年先とかその先を描いてて実現していくというわけですね。

永守:将来を想像して実現していくということで言うと、創業は自宅で始めたんですけど、10周年の時には京都で一番の場所に本社を構えるんだと考えたんです。「今は自宅でやっているけど、10年後には京都の烏丸御池という一等地に行くんだ」と、社員に宣言しているわけね。

 それで、創業10周年の時にはそれを実現し、次の20周年では自社ビルへ入るとやった。それも実現すると、今度は30周年の時に京都で一番高いビルを建てると言ったんです。そして全部その通りになっているわけですね。「人間、出来ないことはない」とか言うと、「あんた、それはオーバーじゃないか」と言われるんだけど、リーマンショックでずれたりはしても、みなやってきてます。

 それはたんに「ガンバリズム」ではないですよ。将来を想像して、それに向けて何をやるかを考えて進めていく。想像というのは、そういうことだと思うんですよ。

入山:永守さんの「将来を見据える力」って、例えばほかの経営者、それこそサラリーマン経営者に足りないことではないでしょうか。それはご自身の才能なのか、それとも磨けばできるものなんですか。

永守:京都には創業者が多いですけど、これは、ちょっと頭がおかしいのが多いですよ(笑)。京都の創業者が集まると、お互いに「あんた変わっている」と言い合うことになる(笑)。皆自分で考えた「こういう時代が来る」という思いを信じて疑わない。でも一方で、足元では家計簿経営のような細かいことを徹底する。

入山:先の事をすごく創造的に考えるんだけど、手前ではそれに向けて、一歩ずつ一歩ずつやる。そのバランスというか、矛盾がすごいですね。

 今、日本で業績がいい会社って、創業者がまだトップをやっているか、同族が多いんですよ。利益率でも成長率でも統計的にはっきり差が分かります。

永守:創業者とサラリーマン経営者の違いは、やっぱり「この会社を何とかしないといかん」という理念とか、職業観のようなものかもしれないね。全部とは言いませんよ、サラリーマン経営者の中にも、立派な経営者もおられるから。でも、創業者には、自分の出世のためというものはない。「世の中はこうなる」「こう変わっていく」「だからこれをやりたい」という強い思いがあるということだろう。

(続く)