入山:米国のGEとかデュポンのような企業も、M&Aをいっぱいやっていますけど、実はそれ以上に売却しているんですよね。永守さんは、いっぱい買っても売らないんですよね。

永守:売らない。ずっと全部黒字だから。

入山:何でそうなるのでしょう。M&Aを使った事業の構想があって、それが狙い通りに動いているから?

永守:さっきも話したように、まず安く買っている。安くという言い方はおかしいかな。適正な価格でまず買っていると。中には「あ、これはちょっと高く買わないといかんな」というのがあるけどね。やっぱり、競争もたくさんあるし。代替がない場合もある。

 滅多にないけど、その時は自分の基準より高くなることもある。「ああ、これは3年間は下痢するな」と感じるんですよ。

 下痢というのは、利益を出すのが大変になる、かなり苦労するということです。すると、一時的には赤字になって、数年後から黒字化する。さっき赤字がないと言ったのは、ある程度こなしてきた後のことね。でも、そういう計算は最初からやる。目利きというのは、そういうことなんですよ。

「『売上高・10兆円』、大ぼらでも必ず実現する」

入山:その目利きというのは、結局、永守さんが最後は現場に行って、自分で見て判断するというようなことですか。企業買収では、売り手自身の情報は売り手の方が買い手より詳しく知っています。経済学で言う「情報の非対称性」です。でも、目利きのできる経営者は「情報の非対称性」が高い状況でも、より安全な企業を買えることになりますね。

永守:なるほど。現場に行くかどうかといえば、もちろん行きます。現場を見て経営者に会う。僕は大体競争相手を買う。だから技術は分かっています。どの程度の技術か。自分のところと田んぼが違う、つまりマーケットが違う会社は買わないですね。全部、近いところの会社です。

 イメージを言ってみたら、島を買うようなことです。陸地、つまりこちら側からそこに橋を架けられるか、ボートで行けるか、泳いで行けるかを見る。大きな船や、飛行機で飛ばないと行けないようなところは買わない。

入山:なるほど。自分でちゃんと見えている会社を買う。

永守:うん。それで買うというのも、島を3つくらい買っていくんですよ。そしてその後、島同士を埋め立てたりしてつないでいく。それから最後に、3つの島の真ん中の海の水をぱっと外に落とすと、全部自分の土地になっちゃう。

 だから100坪の島を3つ買って300坪と思っていたら、真ん中に1000坪あった。1300坪になっちゃうわけ。これがシナジーです。それを最初から構想して取りかかるわけ。

入山:なるほど。具体的に言うと、どんな会社ですか。

永守:例えば2014年春にホンダからホンダエレシス(現・日本電産エレシス)という会社を買った。「ECU」という電子制御回路の開発会社です。この技術を当社や、海外の買収した車載用などのモーターと組み合わせれば、高付加価値モジュール製品として売れるようになる。単品売りから製品のレベルが上がるわけですな。

 エレシスにとっても、ホンダの傘下だと親会社にしか売れないけど、うちに来たことでいろんな会社に販路を広げられるようになりました。おかげで業績はすっかりよくなりましたよ。