入山:実は僕は「日経ビジネス」の経営塾でも話したんですが、確かに永守さんの仰るようにPMIは大事です。でも、永守さんの場合、買収の際の目利きがしっかりしているので、結果的にPMIの方に能力を割けるようになっているのではないでしょうか。
永守:うんうん。
入山:永守さんの頭の中には、買いたい企業のリストが何十社とか、何百社とかあるわけですか。それで、散々検討して買わないという結論をいっぱい出している。
永守:そうです。去年はいったん候補に挙げた企業を8社も見送ったからね。そしたら最近、また同じ企業の話があったりして…。色々動くんですよ。
入山:そうなんですか。
永守:でも、僕は買収条件を変えませんよ、と言っているからね。今は円高が進んだので近づいてきたよ。
入山:なるほど。ドルベースでの値段は下がってきている。
永守:下がってきている。それでもういっぺんどうですかと。でも、ということは、今までどこにも売れなかったんだろうね。それなら値段が(もっと)下がったら買うよ、と言っているわけ。
M&Aでは徹底してシナジーを検討する
入山:その時、永守さんが一番、気を付けているポイントってどういうところなんですか。
永守:僕の場合は技術力だね。その会社の技術力。
入山:技術があれば大丈夫ですか? 例えば現場がある程度、士気が低くても。

日本電産会長兼社長。1944年京都府生まれ。職業訓練大学校を卒業。73年に日本電産を創業した。ハードディスク向けから家電・商業・産業用、車載モーターまで事業を広げ、世界有数のモーターメーカーに育てた。
永守:技術力ということは、人材ということにもつながってきますね。だけど、海外の人は辞めるからね。必ずしもその人材の力は安定しているとはいえませんね。それは大事だけど、例えばどういうマーケットを持っているかとか、どういう製品を出しているかとか、どこに工場を持っているとか、そういうことも大事なんです。
会社というのは、大体、(持っている資産や技術の価値からすると)ピークの価格で売ろうとするんですよ。一方、シナジーを我々が出せないと利益は出ないでしょう。それなのにシナジーの出せない会社を買うから、減損でやられるわけですね。
入山:なるほど。その辺にはすごく興味があります。永守さんは、今までのM&Aは全部成功しているそうですが、これは他には例のない事ではと思っています。
永守:それで減損もゼロです。50社近く買って。
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