(前回から読む)

早稲田大学ビジネススクール准教授。1972年生まれ。慶応大学・同大学院卒。2008年に米ピッツバーグ大経営大学院で博士号取得。米ニューヨーク州立大学バッファロー校助教授を経て2013年から現職。著書に『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』(日経BP社刊)など。
入山:最近、日本企業が海外企業に対するM&A(合併・買収)を活発にやっています。かなり大型買収が多いですが、日本電産はかつては中小型が中心でしたね。イチローみたいにこつこつ小さいのを買うと言われていて。
永守:ヒット、ヒット、ヒット。ヒットかフォアボールかどっちかね(笑)。
入山:取りあえず一塁に出るという。
永守:そうそう。そうやってとにかく試合を作っていく。
入山:そんな永守さんから見ると、今の日本企業の大型M&Aって、どう感じられます? 結構最初からでっかいホームランを狙っているようですが。
永守:本人はホームランを打とうと思うんだけれども、実際にはそうはいかない。難しいんですよ。必要以上に大型買収をすると、後から減損の憂き目を見たりする。ホームランを打ったつもりだけれども、ホームランにはならないんですよ。
入山:なるほど。キリンホールディングスも2011年に3000億円で買収したブラジルメーカーが、2015年に1000億円余りの減損になりました。日本企業はやはり「買わされる」ことが多いのでしょうか。
永守:個別の例について僕は言わないけど、一般論として話せば、買わされているというよりも、目利きが間違っていることが多いように思うね。言い換えれば価格の算定が間違っているということですよ。何故そうなるかというと、買いたい気持ちで行っているからです。
本来、M&Aというのは、全体を100とすると、買収は20くらいなんですよ。残りの80はPMI(買収後の一体化)。買収後の統合が重要なんです。だから、最初からそれを考えて取りかからないと、痛い目に遭うわけです。
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