日本電産・永守社長と早稲田大学ビジネススクール・入山准教授の白熱対談の第2回。M&Aを成功させ続ける永守社長独自の目利き力と、30年先に目を向ける予測力について徹底討論した。


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<b>入山 章栄(いりやま・あきえ)氏</b><br/>早稲田大学ビジネススクール准教授。1972年生まれ。慶応大学・同大学院卒。2008年に米ピッツバーグ大経営大学院で博士号取得。米ニューヨーク州立大学バッファロー校助教授を経て2013年から現職。著書に『<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4822279324" target="_blank">ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学</a>』(日経BP社刊)など。
入山 章栄(いりやま・あきえ)氏
早稲田大学ビジネススクール准教授。1972年生まれ。慶応大学・同大学院卒。2008年に米ピッツバーグ大経営大学院で博士号取得。米ニューヨーク州立大学バッファロー校助教授を経て2013年から現職。著書に『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』(日経BP社刊)など。

入山:最近、日本企業が海外企業に対するM&A(合併・買収)を活発にやっています。かなり大型買収が多いですが、日本電産はかつては中小型が中心でしたね。イチローみたいにこつこつ小さいのを買うと言われていて。

永守:ヒット、ヒット、ヒット。ヒットかフォアボールかどっちかね(笑)。

入山:取りあえず一塁に出るという。

永守:そうそう。そうやってとにかく試合を作っていく。

入山:そんな永守さんから見ると、今の日本企業の大型M&Aって、どう感じられます? 結構最初からでっかいホームランを狙っているようですが。

永守:本人はホームランを打とうと思うんだけれども、実際にはそうはいかない。難しいんですよ。必要以上に大型買収をすると、後から減損の憂き目を見たりする。ホームランを打ったつもりだけれども、ホームランにはならないんですよ。

入山:なるほど。キリンホールディングスも2011年に3000億円で買収したブラジルメーカーが、2015年に1000億円余りの減損になりました。日本企業はやはり「買わされる」ことが多いのでしょうか。

永守:個別の例について僕は言わないけど、一般論として話せば、買わされているというよりも、目利きが間違っていることが多いように思うね。言い換えれば価格の算定が間違っているということですよ。何故そうなるかというと、買いたい気持ちで行っているからです。

 本来、M&Aというのは、全体を100とすると、買収は20くらいなんですよ。残りの80はPMI(買収後の一体化)。買収後の統合が重要なんです。だから、最初からそれを考えて取りかからないと、痛い目に遭うわけです。

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