生活費までも含めると2年間で2000万円近くかかる海外でのビジネススクール留学。私費で留学している田中氏のようなケースだけでなく、社費留学でも同様の意欲を持っている学生は多い。

 「会社を辞めるのは簡単。でも恩義を感じているし、戻って会社に貢献したい。アントレプレナーシップは起業だけではない。新しいことを始めたり、変革を起こしたりするのはすべてアントレプレナーシップだ。どんな組織の中でも変革は起こすことができる」。同じくバブソンに留学している、野村証券の平山亮氏はMBA取得後に投資銀行部門に戻り、新たな業務に取り組む考えを持っている。

 日本企業はMBA保持者の活用が下手だと言われるが、野村証券は違う。社費留学制度を数十年間続けているため、「同じ経験を積んだ先人が多く、MBA保持者の使い方が分かっている」(平山氏)のだという。

答えではなく方向を示すのが経営学

 確かに経営には1つの答えがない。ただ、その点でもって経営学は役に立たないと切り捨てるのは早計だろう。組織内の人、モノ、カネと業績との関係性を読み解く経営学は近年、目覚ましい発展を遂げている。だが、最先端の理論を単に暗記するだけでは成功を手に入れることなどできない。

バブソンのキャンパス内の風景。学生が数人集まればすぐにビジネスモデルに関する議論が始まる
「ビジネス・デベロップメント・ハッチェリー(事業開発ふ化場)」のプレートが掛かる部屋。学生が起業後に無料でオフィスとして使うことができる
「スピーチ・センター」。ベンチャーキャピタルや金融機関などから資金を調達しやすくなるように伝わるプレゼンの仕方を学べるサービスもある

 早稲田大学ビジネススクールの入山章栄准教授は経営学を「羅針盤」に例える。答えそのものを提示してくれないが、目指すべき方向は教えてくれる。羅針盤を的確に使いながら、最善の方法をいかに迅速に導き出し、果敢に決断を下すことができるか。バブソンのアントレプレナーシップ教育に触れ、その点にこそMBAの真価があることが分かった。

■変更履歴
3ページの本文中、4番目の段落に「道半ばで頓挫」とあったのは「黒字化を達成し退任」の誤りでした。お詫びして訂正いたします。本文は既に修正済みです。 [2016/04/19 11:40]