「1年間の授業を受け持つと必ず泣きながら相談に来る学生がいる。授業の途中でCEOが解任されるといったドラマも起こる。そんな何が起こるか分からないライブ感がこの授業の魅力。授業では大学の資金を使っているので、事業に失敗しても破産することはない。でも失敗したことは絶対に忘れない。それが重要なのです」(山川准教授)

 FMEにも盛り込まれているアントレプレナーシップ教育こそ、バブソンの神髄だ。米ニューズ・アンド・ワールド・リポート誌のMBA世界ランキングにおけるアントレプレナーシップ部門で23年連続トップを獲得した――。バブソンの正面玄関にはこの偉業を称える垂れ幕が誇らしげに掲げられている。

バブソンの山川准教授。サッカー日本代表・本田圭佑選手のブレーンも務めている
アントレプレナーシップ世界トップを示す垂れ幕

 バブソンのマイケル・フムラ広報担当役員はアントレプレナーシップ教育についてこう説明する。「ここではすべての学生が何か新しいものを作り出すことを奨励している。それは起業だけでなく、新しいイベント、新しいクラブ、芸術作品でも何でもいいのです。新しいことに挑戦する精神こそがアントレプレナーシップだと我々は考えています」。

教授陣にも求められる「起業家精神」

 FMEの授業では毎週、経営理論のツールを紹介する。例えば、購入者の意思決定モデルを示し、人がモノを買う時にどのような段階を踏むのかを教える。学生はその理論を実際のビジネスに当てはめるだけではなく、実践と理論の乖離を指摘しないと試験はパスできない。既存の経営理論の弱点を見つけ出し、改良を加えることも、広い意味でのアントレプレナーシップなのだ。

 アントレプレナーシップは学生だけでなく、教授陣にも求められる。「現実の経営事例を教材に議論する『ケースメソッド』は3~4年同じ事例を使うのが一般的。でもここでは毎年新しく作り変える。最先端の事例を試すため、夏期休暇には様々なベンチャー企業に入る」。山川准教授はこう説明する。

 「バブソンのアントレプレナーシップ教育の起源は、創立者であるロジャー・バブソン氏の信念にある」。そう説くのは、村田機械の村田純一会長だ。村田会長は1958~1960年にバブソンへ留学し、MBAを取得した。留学中にバブソン氏の謦咳に接する機会があったという。