ものづくりの面でビームサントリーの根幹をなすのが、ケンタッキー州にある2つの蒸留所だ。1つは「ジムビーム」などを製造するクレアモント蒸留所、もう1つが「メーカーズマーク」を製造するメーカーズマーク蒸留所だ。ビーム家、サミュエルズ家というそれぞれの蒸留所を創立した一族の当主が生産責任者を務め、伝統のレシピや製法を守りながら時代に合わせたバーボンの在り方を追求している。
クレアモント蒸留所でつくられるジムビームは販売量が世界最大のバーボンで、業界シェア4割を誇る。バーボンは原料にトウモロコシを51%以上使用する、内側を焦がしたオークの新樽にアルコール度数62.5%以下で詰めるなど、厳しく条件が定められている。同蒸留所では厳選した原料や代々伝えられる酵母を使い、独特の香味や味わいを作り出している。ジムビームのほか、「ノブ・クリーク」や「ブッカーズ」といった高価格帯のバーボンも生み出してきた。
同蒸留所を訪れた際、「ウイスキーづくりに重要なのはまさにスピリッツ(精神)だよ」と力説してくれたのが、ビーム家7代目当主のフレッド・ノー氏。ウイスキー業界ではその名を広く知られ、愛好者にはノー氏のファンも多い。シャトックCEOらが経営を担い、製造現場はノー氏が全責任を負う分担が徹底されているのも特徴だ。
「バーボンづくりを進化させる」
一方のメーカーズマーク蒸留所も、米国の国定史跡に指定される伝統ある蒸留所。アイルランド移民のサミュエルズ家が代々製品改良を重ね、プレミアムバーボンとして1959年にメーカーズマークを売り出した。ふっくらとした甘みと香ばしさが特徴で、赤いロウで封をするハンドメイドのボトルで知られている。
クレアモント蒸留所に対し、規模の小さいメーカーズマーク蒸留所は原則メーカーズマークのみを製造してきた。ただ、2011年にサミュエルズ家の当主となったロブ・サミュエルズ氏は原酒樽の中にフレンチオークの板を沈め複雑な味わいを持たせた「メーカーズマーク46」を開発。「新しいアイデアを積極的に取り入れて、バーボンづくりを進化させたい」と意気込む。
蒸留所と並び、ウイスキー市場のトレンドを捉え付加価値商品を開発するうえで重要な役割を担うのが、クレアモント蒸留所近くにあるビームサントリーの「グローバルイノベーションセンター」。スタイリッシュなバーカウンターと最新の研究設備を持つ同センターは、グローバル展開する新製品の研究開発を担う最重要拠点の一つだ。カラフルな会議ブースでは、研究員らがミーティングに臨んでいた。
センターにはウイスキーの中身の成分分析や容器の強度検査から、安全性の検査など様々な機能がある。中でも、ウイスキーに蜂蜜や果実、スパイスなどを加えて作られるフレーバードウイスキーや、多種多様なスピリッツ、リキュールなどを組み合わせて作られるアルコール飲料などは若者を中心に需要が拡大。開発は同センターの重要な役割となっている。
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