自社を上回る伝統や事業部門の規模を持つ会社を買収した後、どのようにその価値を高めるのか――。日経ビジネス4月11日号の特集「ビールM&A最終決戦」では、日本の食品・飲料分野で1兆6500億円という過去に例のない大型買収に踏み切ったサントリーホールディングス(以下、サントリー)に焦点を当て、この課題を取り上げた。買収先のビームサントリーに対するガバナンスの徹底や互いのノウハウを持ち寄った新たな事業展開など、サントリーの挑戦はこれからが本番だ。新浪剛史社長が経営の最優先テーマと位置付けるビームサントリーの実力とはどのようなものなのか。本誌記者が米国に飛び、実際にその目で確かめてきた。
ビームサントリーのマット・シャトックCEOは「サントリーとビームは伝統や起業精神などで共通する部分が多い」と説明する、(撮影は全て常盤武彦)

 シカゴ郊外にあるビームサントリーの本社オフィス。サントリーのグループ全体の蒸留酒(スピリッツ)事業を統括する拠点として、世界中の市場のトレンドや競合他社の動向をリサーチし、戦略を立案する場所だ。オフィスで取材に応じたマット・シャトックCEO(最高経営責任者)は、「サントリーとの統合から1年が経ち、統合自体もビジネスもいい結果を残すことができた」と振り返った。

伝統維持とグローバル化を両立

 巨額買収に伴うガバナンスやシナジー効果の創出についての課題は特集でも詳報した通りだが、足元のビームサントリーの業績は好調。2015年12月期の売上高は前の期比23%増の6561億円、営業利益は同30%増の650億円と、グループ全体の業績をけん引する。主力の北米や日本での売り上げが好調で、コスト削減の効果も上がってきているためだ。

 1795年の創業以来、200年以上にわたって米国のバーボンの中心を担ってきたビーム社。ものづくりの歴史に加えて125ヵ国で商品を販売するグローバル企業として世界中に販路を持つ。さらに、近年の米国では従来のウイスキーに果実やハチミツなどで味付けをした「フレーバードウイスキー」など新種の商品も存在感を増しており、R&D(研究開発)の重要性も高まる。ビームサントリーはこうしたR&Dなどを一段と強化することで、蒸留酒世界大手の英ディアジオや仏ペルノ・リカールに対抗しようとしている。