
パナソニック社長。1979年、松下電器産業入社。マルチメディア開発センター所長、AVCモバイル・サーバー開発センター所長を経て、2008年にオートモーティブシステムズ社社長、2011年にAVCネットワークス社社長に就任。2012年6月より現職。「素直な心で衆知を集めて、未知なる未来を創造する」を座右の銘とする(写真:北山 宏一、以下同)
「ビジネスが儲からないのは、ひとえにコンペティターが多すぎて、価格競争に力を注がなければいけなくなるからです。そんなマスマーケットで先を行く技術開発や製品開発をやり続ける環境ではもはやないと思っています。ではどうするのか?ニッチマーケットに行くわけです。なかなか採算が合わないのがニッチマーケットですが、私たちは採算が合うマーケットを探します」(津賀氏)
そこでパナソニックが、今、力を入れているのが自動車メーカー。主戦場はデジタルコックピットだ。
「各メーカーにはこだわりがあって、どのメーカーのデジタルコックピットも似て非なるものです。それぞれ求めるスペックが違う。だからニッチです。ニッチに尖らなければいけない。その分、コンペティターが少ない。外国勢もそうそう参入できない。そういうマーケットを見つけて、社内のリソースを有効活用しようというわけです」(津賀氏)
もっとも、それだけでは将来をまだ見通せない。新たなマスマーケットを自ら切り開くことも必要になる。同社にとってのそのためのターゲットのひとつは、介護事業だ。
「『パナソニックがなぜ介護事業?』と疑問を投げかけられる領域にも投資をしています。ある程度規模を目指しますが、あくまでもメインに追い求めるのはボリュームではなく、そこでITなどを使って、どのような進化を成し遂げることができるかということです」(津賀氏)
介護事業も現在はニッチマーケットだが、このマーケットは未来のマスマーケットだという。しかも、津賀氏曰く、「ITメーカーはバーチャルな世界で暮らしているから、リアル性が高くなればなるほど、足が引けるもの」と。
「以前、ある大手IT企業が自動車のナビゲーションシステムを受注したのですが、バグばかり出してしまうということがあった。たとえどんなに素晴らしいIT企業でも、泥臭い現場まで下りていくのはむずかしい。だから勝手がわからない。同様に介護現場まで下りてこられるITメーカーはそう多くないと踏んでいます。そんなふうに現場感あふれる事業はITメーカーが最も苦手とするので、いまだにITやロボティクスなどの進化の可能性が大きなニッチ領域ということになります。私たちは今後、そうした場所を増やしていくつもりです」(津賀氏)
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