
三井不動産社長。1978年、三井不動産入社。業務企画室長、経営企画部長を経て、2005年に執行役員に就任。グループ執行役員(三井不動産レジデンシャル常務執行役員)、常務取締役、専務取締役を経て、2011年6月より現職。時間とともに価値が低下する「経年劣化」に対し、時が経つほど魅力が増す「経年優化」する街づくりを目指す(写真:北山 宏一、以下同)
不動産業界は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでは右肩上がりの景気が予想されている。しかし、そうした状況に安心していたのでは、イノベーションのジレンマに陥ったかつての「大企業」の轍をまた踏むことになってしまう。
三井不動産の菰田正信社長の見解も同じだ。「私たちもずっと増収増益できていますが、目下の最大の問題は2020年以降の市場をどう予測し、そこにいかに適応するかです。このままのビジネスを続けているだけでは、成長どころか現状維持も難しいと考えるからです」と言う。だからこそ、新たなイノベーションが必要というわけだ。
不動産もハードの勝負は既に終わった。消費者が求めているのは「入れ物」ではなく、そこで、どのような暮らしができるかということだ。
「住宅もそうですし、商業施設もそうです。とくに人気の商業施設は時代とともに変わります。もはや、百貨店もGMS(総合スーパー)も従来と同じ業態のままでは厳しい状況と言えます。ショッピングモールが、今、流行りですが、そこに求められるものも様変わりしています」(菰田氏)
「オフィスビルもそうです。オフィスビルに入居いただくテナントさんにしても、求められる立地や機能は大きく変わってきています。そのビルでどのようなオフィスライフを送れるのか、自分たちのビジネスに何かメリットがあるのか、ということがこれまで以上に重視されるようになりました」(菰田氏)
三井不動産にとって、オフィスビル事業は創業以来のコアビジネスだ。それに比べて、商業施設は比較的歴史の浅いビジネスだそうだ。後者はまだまだ変化の余地があるが、オフィスビルは難しい。だからこそ、ソフトであり、暮らし方、働き方の提案が重要であり、さらに言えば、ビル単体ではなく街全体の魅力が重要になる。
「今は『街対街』の競争フェーズなのです。私たちは、ただビルという入れ物を建てるのではなく、そのビルが機能する街そのものを開発し、改善していかなければいけないのです」(菰田氏)
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