『フィンテック』という言葉が市民権を得た。これは、金融(finance)と技術(technology)から成る造語であり、主にITと金融を融合した新しいサービスのことを意味する。この言葉に代表されるように、昨今の金融テクノロジーの進化はすさまじい。その最先端を走るように見える野村證券を有する野村ホールディングスCEOの永井浩二氏は、テクノロジーの進化がもたらす影響がますます大きくなっていることに、驚くとともに、恐ろしさすら感じると言う。
永井浩二(ながい・こうじ)氏
野村ホールディングス取締役兼代表執行役社長 グループCEO(最高経営責任者)。1981年、野村證券入社。豊橋、岡山、京都の支店長、執行役企業金融本部担当などを経て、2011年にCo-COO兼代表執行役副社長、2012年4月に代表執行役社長に就任。同年8月より野村ホールディングスCEOを兼務。「天網恢々(てんもうかいかい)疎にして漏らさず」を座右の銘とする(写真:北山宏一、以下同)

 「従来は、顧客ニーズの変化があって、それに応答するような形でテクノロジーが進化してきたわけですが、いまは違います。まず、テクノロジーの進化ありきで、場合によっては、それが顧客のニーズを変更させている。顧客のニーズがどう変更していくのか、ますます予測することが難しくなっている」(永井氏)。

 既存ビジネスや既存マーケットで高いシェアや圧倒的なビジネス基盤を有する企業ほど、新しいイノベーションに対応できないという「イノベーションのジレンマ」。このジレンマは、あっという間に変更する顧客ニーズに対応できない企業の苦悩をそのまま意味する。

 「『イノベーションのジレンマ』に陥らないようにするためには、今は、強力なトップダウンのリーダーシップしかないと思っています。ところが、それでも、ふと振り向くと、『大企業の常識』でしか考えることのできない者は、ついて来ることができない」(永井氏)。

 「イノベーションは、恰好がいいから、流行だからやるのではない。環境変化を生き抜くためにやっている。やらないと生き残れないから、背水の陣を敷いて、やっているのです」(永井氏)。

 

 「たしかに、普通の会社であれば、あと5年くらいは、そのまま存続するかもしれません。だから、あと5年くらいで引退する人たちはいいのです。しかし、いま、30代、あるいは40代の人たちはどうでしょう。10年後も、20年後も、その会社は、社会の変化とお客さまのニーズの変化に応え続けていけるでしょうか。だから、うちの社員を含めて、若い人たちと話をする時、『ずっとその会社で働き続けたいのなら、会社を創り続けるぐらい、必死にならないといけない』と言っています。会社の変革は他人事ではなく、まさに自分事なのです」と永井氏は語る。