イノベーションを託せるコア人材は、経営者が自らの目を信じて引き抜くもの
吉村:私もすごく人を重視しています。まずは経営者。そして経営幹部です。大学3年の時に起業し、25歳の時に同業の人と共同で弊社を創業しました。それから8年間ほどは、すべてを二人で決めていたのですが、それでは売り上げは上がっても、どうも利益が上がってこない。上場もできなかった。それで、チーム経営に変えようと思いました。
それまでも、幹部人材は採用していましたが、ほとんどヘッドハンティングの会社を頼っていました。それをやめて、自分たちで一番よいと思う会社のエースを口説いて、引き抜くようにしました。
年俸もストックオプションも、それまでの設定を外して、より高い数字を提示し、口説きました。そうした路線変更が功を奏して、そこから1年後に東証マザーズに上場することができ、さらにその1年後には東証一部に上場できました。「事業は人」という言葉の意味を、本当に理解できました。
魚谷:企業は誰のものか、という議論があります。私は3種類のステークホルダーの箱をイメージします。一つは投資家や株主の箱。二つ目はお客様や取引先、ビジネスパートナーの箱。そして三つ目、真ん中の箱は社員の箱です。
大企業もスタートアップ企業と全く同じで、発想を新たにして、今までにないモノを創り出していく。そうしたイノベーションは、やらなくてはいけない。今日現在の事業を守っているだけでは、明らかに成長が鈍化してしまいます。それは組織の死を意味します。
新しい価値を創り出すのは、間違いなく人の発想です。だから社員の箱が真ん中なのです。例えば、森川さんの会社、C Chanelと提携したのも、若い人がそうした提案をしてきたからです。
それで、C Chanelに訪ねていって、いろいろと見学をして、話も聞きました。すると、私たちがまさにこれからお客様にしていきたいと思う人たちがそこにいた。「この人たちと一緒にアイデアを出していきたい」と思ったわけですが、これは誰かが言い出さなければ、わからなかったことです。
そんなふうに、すべてのイノベーションは人の発想、情熱から生まれるものだと思っています。そこがまずなければ、価値創造ができず、売り上げも利益も上がらず、ステークホルダーに還元できないということになってしまいます。
(後編に続く)
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