アイデアの多産多死を実現する

行動指針5 組織内外の壁を越えた協働を推進する

 オムロンのルーツは、立石一真氏が創業した「立石電機製作所」。町工場のようなベンチャー企業から大きく成長したのが、いまのオムロンだ。

 「現在の事業規模は8000億円くらいですが、事業を細分化していくと、100くらいの事業ユニットになっています。そうした意味で、オムロンは小さな事業体の集合体であるという表現が馴染むわけです。あくまでも小回りの利く組織形態であり続けることを重視しています。ベンチャーのDNAをしっかりと受け継いでいますから、新しい領域に常にトライしていこうという姿勢は忘れていません」(山田社長)。

 オムロンには、「多産多死のマネジメント」という言葉がある。「そのために、ひとつは、コーポレートベンチャーキャピタル、あるいはファンドのような、短期の結果に対して細かいことをあまり言わない予算を持っています。そのなかで、ある程度の段階になるまで、要は、形になるまでは事業を継続させる。よいアイデアがあったら、まずは取り掛からせる仕組みを作って、この予算でバックアップしています」と山田社長は語る。

 もうひとつは、アイデアを上にあげても潰されないようにすること。「『三層で徹底的に議論する』という姿勢を強化しています。まずは、マネジメントチームで議論する。当社では、CTO(最高技術責任者)傘下にインキュベーションの役割を持たせていますが、たとえば、ファクトリーオートメーション(FA)事業のトップとヘルスケア事業のトップとCTO、あるいはCEOが、ガンガンと議論をするようにしています。合宿もよくやっています」(山田社長)。

 そこでまず意識合わせをして、その次に部門長クラスで侃侃諤々の議論をする。そして現場クラス。この3つの層で徹底的に議論する。その際に、良いアイデアがあればマネジメントチームが先に合意し、手を握ってしまうわけだ。それで現場が思い切って新規事業に集中できる環境をつくってしまう。さらに、100にもなる事業ユニット間に生じる壁で、よいアイデアが潰されないように本社機能部門が横串で支援する。これを事業ラインの「タテ」と本社機能部門の「ヨコ」をとって、「タテヨコ連結」と呼ぶ。

 「その結果、たとえば新規事業傘下の技術部隊が、ヘルスケアで開発しているバイタルサインのセンシング(検知)技術を自動車に活用したらどうなるのか。あるいはFAの人と機械のマッチングのところで応用したらどうなのか、という相乗作用が生まれています」と山田社長は語る。

 「我々は責任者に若手を抜擢して、コーポレートベンチャーキャピタルを運営展開していますが、実は出資のリターンを期待しているわけではありません。ベンチャーキャピタルを運営することによって外部の様々なところとの付き合いが生まれる。その結果、我々が持っているものと、外部にあるもので何か化学反応が起きて、新しい価値が創造されることを期待しているのです」(山田社長)。