経済産業省、株式会社WiL、一般社団法人Japan Innovation Network(JIN)が共同運営する「イノベーション100委員会」。ここに所属する、イノベーションを興すための変革に向けた思いを持つ企業経営者が参加した座談会から見えてきたのは、「変革を起こす経営者の姿」であり、彼らが共通でぶつかる「5つの課題」、そして課題を乗り越えるためにこだわる「5つの行動指針」だ。
 本連載では、2017年の全5回の座談会に参加した14名の経営者のイノベーションへの思いと、変革に向けた挑戦をお伝えしている。

 2011年に49歳の若さで、常務から代表取締役に抜擢された山田義仁氏。山田氏は入社以来、ずっとヘルスケア分野を歩み、オムロンの主力である制御機器部門の経験がない中での抜擢だった。

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常にWhyを問いかける

行動指針1 変化を見定め、変革のビジョンを発信し、断行する

山田義仁(やまだ・よしひと)氏
オムロン社長。1984年、立石電機(現オムロン)入社。一貫してヘルスケア部門を歩み、ロシア、中東などの新興国市場の開拓を担当。米国Omron Healthcare, Inc. 副社長。欧州Omron Healthcare, Europe B.V. 社長などを経て、2008年にオムロンヘルスケア社代表取締役社長、およびオムロンの執行役員に就任。2011年に代表取締役社長CEOに就任し、企業理念を軸に、事業を通じた社会課題の解決による持続的な企業価値の向上を目指している(写真:北山 宏一)

 「これからの時代は『共鳴するマネジメント』が大切だと思っています。何に共鳴するかというと、企業理念の実践です。オムロンで言えば、『事業を通じて社会的課題を解決する』という考え方が企業理念のなかに織り込まれていますが、これが社内にしっかり浸透していれば、新しいことに挑戦して変化を起こす、また壁を乗り越える力になります。そしてこの理念はベンチャー企業や他の組織とともに価値を作っていくときの原動力にもなる。だからこそ、企業理念を共鳴するレベルにまで社内に浸透させるというのが、経営陣にとっては一番大切な仕事なのです」(オムロンの山田社長)。

 「だから常に私は、Whyを問いかけます。なぜそれを行うのか?WhatやHowよりも、それが一番大切だからです。そのための指針が『企業は社会の公器である』というオムロンの企業理念なのです。一人ひとりの社員の行動が、できるだけその理念に一致できるように努力しています」と山田社長は言う。

 オムロンでは「TOGA」という全組織を挙げての草の根活動を行っている。The Omron Global Awardの頭文字で「TOGA」だが、「私はこういうことにチャレンジします」と企業理念の実践を社員が宣言する。まずチームを組んで事前登録をし、1年間活動して、その成果を各エリア、各事業部で発表し合い、より企業理念を実践しているテーマが勝ち上がっていく。

 「最後は、世界中から勝ち上がってきた13のテーマの関係者が創業記念日に京都本社に一堂に会して1日かけてプレゼンを行い、その内容を全世界に放映します。いま、オムロンはグローバルで社員が3万7000人いますが、今年は社員数を上回る4万人以上がTOGAに登録しました。ひとりで複数のチームに登録している社員が大勢いるからです。それくらい、この草の根活動は社員の共鳴を得ています」(山田社長)。