一緒にキャンプをしたお客さんは10万人

この日の対談はユーグレナの出雲充社長(左)と行われた

 山井氏は、スノーピークへの転職に際して「自分が心から欲しいと思う商品やサービスだけを作ろう」と決意したそうだ。そして、自分が理想と思うブランドを生み、育てる。そのための同社の最大の特長は「B with Cの経営戦略」だ。「B to B」でも「B to C」でもなく、C(消費者)と共に歩む経営という意味だ。

 「年間10回ほどのイベントを行い、合計4000~5000人くらいの方と一緒にキャンプをしています。経理の人間も、工場で製品を製造している人間も、普段は外部の人とあまり接しないのですが、そうしたイベントにはできるだけ全員が参加できるようにしています」(スノーピークの山井社長)。

 しかも、同社は本社自体がキャンプ場の中にある。だから、働いているだけで、自分たちが作っているものがユーザーに何をもたらせているのかということを自ずと社員全員でシェアできるのだ。その経験を通じて、自分たちの仕事の意義というものが全社員に浸透している。

 彼らはユーザーを「スノーピーカー」と呼ぶ。社員とスノーピーカーの間にはしっかりとしたコミュニケーションが築かれている。この関係は稀有な例と言えそうだ。「メーカーとして、ユーザーの皆さんを幸せにしたいので、『我々とちゃんとコミュニケーションを取ってください』『私たちにジョインしてください』とお願いしています。我々はB with Cとでも言うべき、新しい顧客との関係を築く会社を創りたいと思っているのです」(スノーピークの山井社長)。

 山井氏がこれまでに一緒にキャンプをしたスノーピーカーの数は、実に10万人に達している。それはモノを売りたいからではなく、まさにB with Cの関係を構築したいからだ。「モノには物質的価値と精神的価値がありますが、どんなビジネスでも精神的価値を提供することの重要性が強くなっていると思います。その精神的価値で我々は圧倒的に勝ちたいのです」(スノーピークの山井社長)。

 山井氏は、ブランドのコピーにも使っていた「ライフスタイル」という言葉に、今ではチープさを感じていると言う。猫も杓子もライフスタイルと言い始めたからだ。「そこで我々は、これを『ライフバリュー』という言葉に変えて、本当に人生価値を高めるビジネスにフォーカスして、それができるようなブランドにしていきたいと思っているところです」。

 確かに、ある特定のライフスタイルを実現できる会社はあるが、文字通り、「ライフバリュー=人生価値」を高められる会社というのは決して多くはない。そこを目指して、企業価値を高めていきたいというのは、明確な変革の方向性と言えるだろう。