経済産業省、株式会社WiL、一般社団法人Japan Innovation Network(JIN)が共同運営している「イノベーション100委員会」では、自社からイノベーションを興すために変革の思いを持ち、行動を起こしている企業経営者による、座談会やインタビューでのイノベーション経営についての議論を2015年から続けている。その結果見えてきたのは、「変革を起こす経営者の姿」であり、彼らが共通でぶつかる壁である「5つの課題」、そして課題を乗り越えるためにこだわった思いや行動、「5つの行動指針」である。
 本連載では、2017年の5回の座談会に参加した14名の経営者のイノベーションへの思いと、変革に向けた挑戦をお伝えしている。

 前述の三井物産の安永社長と同じ2015年に、当時の木川社長(現会長)から社長のバトンを受け取ったヤマトホールディングス(HD)の山内雅喜社長。当時、木川氏より10歳以上若い54歳で、2019年に創業100周年を迎える歴史ある会社の社長に就任した。

山内雅喜(やまうち・まさき)氏
ヤマトホールディングス社長兼社長執行役員
1984年ヤマトホールディングス入社。ヤマトロジスティクス社長、ヤマト運輸社長を経て、2015年にヤマトホールディングス社長に就任。ヤマトホールディングスへの入社は、大学時代に母から届いたぎっしり詰まった宅急便がきっかけ。「自分が会社の代表者である」という想いで仕事をする「全員経営」を社員に説く(写真:北山 宏一、以下同)

 「世のため人のために、常に新しい価値を生み出し続ける会社でありたい」と語る山内氏が、世の中にイノベーションを生み出し続けるため、とくに力を入れる2つの「行動指針」について聞いた。

ラストワンマイルで現場が感じた変化を吸い上げる

行動指針3_価値起点で事業を創る仕組みを構築する

 ヤマトホールディングスの山内氏は、40年ほど前に「宅急便」というビジネスを作り上げた当時の社長の小倉昌男氏を「イノベーター」と評する。小倉氏の考え方の座標軸は、「会社は社会の公器であり、ヤマトグループの存在価値は、世のため人のために新しい価値を生み出していくこと」であると強調する。

 「たとえばスキー宅急便やクール宅急便、時間帯お届けサービスなどが生まれたのも、現場のセールスドライバー一人ひとりにまで、そうした意識が浸透しているからです。イノベーションとは周りのニーズや変化に対応して、自分たちもいち早く変化していくことだと思っています」(山内氏、以下同)。

 現場で顧客ニーズの変化を見つける。大きな変化はわからなくても、その予兆を感じとり、現場で対応する。「そして、年に2回、全国10エリアの地域事業単位で行われる『グループエリア戦略ミーティング』の場で、各地域での独自の取り組み内容について発表してもらう。その中から私たちは、皆が使える仕組み、プラットフォームになりそうだというケースを本社に持ち帰り、新たな商品開発につなげます」。グループエリア戦略ミーティングが、自分たちの努力を発表する場として現場のやる気を生み出すとともに、本社がその成果を吸い上げることができる場になっている。

 ヤマトグループでは、サービスを提供する上でのお客様との最終接点となる「ラストワンマイル」を重要視している。日々の具体的な顧客との接点で、いかにニーズの変化に敏感に気づくかが大切だと考えており、そこで気づいたことに対する答えを考え、それをすぐに実行するための現場の工夫を許す社風を大切にしている。