松本:よく、「あいつは優秀だ」と言いますが、何をもって、優秀と言っているのかが重要です。多くの場合は、上位者の言うことをちゃんと聞いて、それを忠実に実行できる人間のことを優秀と言っているようです。

多様性がなければ、化学反応が起きない

 8割くらいの人間はそれでいいのかもしれませんが、あとの2割は、異質な人間を残しておかなければいけない。優秀の裏返しで、「あいつは使えない」と言われる人間を意図的に残しておかないといけないと思っています。

 そうじゃないと、多様性がなくなって、いかなる化学反応も起きなくなってしまうからです。私が思うには、破壊的創造を生み出すのは、やはり異能な人材なのです。

川崎:私は複線的人事にしなければいけないと思っています。管理職になり、経営者になるのが唯一の道では、異質な2割の人間は活かされない。彼らはそんなことを願っていないかもしれない。ところが、今の日本企業はほとんど単線ですよね。評価軸がひとつだから、そこから外れた人間は“ダメな人材”というレッテルが貼られてしまう。

 特にエンジニアは独創的でなければいけない。ところが、独創的な人を「優秀だから」とマネージャーにしてしまうと、つまらない人材になってしまう。そうではなくて、独創的な人間は自由にさせておかないといけないのです。これも広い意味での働き方改革ですね。

松本:まさにそうですね。働き方改革の本質は、どれだけクリエイティブな人間を作っていくかということだと思います。労働時間を短縮するのも、個々の創造性を高めるために、多様な知識や経験を携える時間を確保するというのが本質ですし、組織全体をとらえれば、やはり人材の多様性を高めること。そのためには評価にも働き方にも、採用にも、様々な意味で多様性が必要であるはずです。

 複線的人事にからめて話をすれば、研究所にも純粋な技術屋だけではなく、実は事業意欲を持っている人間もたくさんいるのです。そこで昨年、“イグニッション”というプログラムを作って、研究所内で事業化アイデアを応募しました。現在、応募されたテーマを検討しているところなのですが、これに採用された場合はその責任者として、事業化を進めてもらう考えです。

 そうやって、自分のアイデアを事業化したいという人材を発掘し、育てたいと思っています。

 さらには、これまで失敗と思われていた事業も、別のジャンルで活かせるものもあるはずです。そこで、二輪、四輪、汎用、ジェットなど、すべての研究開発部門のトップが集まって議論する場を設けました。そこで、お互いが持っている技術課題や経営課題を共有し、戦略的に全社で協力して解決していくような仕組みを作り始めています。この仕組みは社内で、非常に好評です。