8割反対のテーマにこそ、社会課題を解決するイノベーションが興る

川崎:私は、OKIの経営トップには珍しい、営業畑出身の人間です。社長になった時は、経営再建が使命でした。3年間、様々なことに挑戦しました。それで一応の再建を達成できたので、“二階建て経営”を目指して、2014年に次世代社会インフラ事業推進室を作りました。

 先ほども言いましたように、私たちはBtoBの会社ですから、社会インフラづくりに邁進してきました。通信インフラ、ITS(高度道路交通システム)など、構想段階から入っていました。

 つまり、「私たちは社会に欠くべからざる企業」だと、「だからしっかりと事業を再構築しなければいけないのだ」と社員たちに宣言しました。そして、様々な課題解決のための次世代の社会インフラづくりも担わなければいけない。そのための、次世代社会インフラ事業推進室です。独立した研究所ではありませんが、事業から離して走らせています。そこから生まれた事業もすでにあります。

 素晴らしい社会を作るために必要なことをやる。それを忘れずにしっかりとやり抜けば、収益は後から付いてくるという気概を持たないとダメだと思うのですね。最近は、やや目先の収益を取りに行き過ぎる傾向があると思います。ロングレンジの視野も持ち続けることが、重要だと思っています。

 両経営者に共通する信念は、「社会の価値を追えば、利益は後からついて来る。だから、金儲けではなく、社会課題の解決を目的とすべきなのだ」ということであり、その信念こそが、イノベーションに結びつくのだと思われる。

松本:新たな研究開発テーマを決める際に、私たちの暗黙知として、「8割方反対されて、初めて価値が出る」「全員が賛成するテーマは、もう過去のテーマだ」というものがあります。

 これは、事業部門からは理解されにくいことですし、それこそ無駄な仕事というふうに見られるのがオチです。それだけではなく、研究所自体も実現までの道のりが遠い“イノベーション“よりも、成果が出やすい“オペレーション”に引っ張られがちなのですね。

 だから、研究所の中にも、イノベーションやクリエーションの使命を持って、その研究開発に没頭できる特区のようなものを設けて、その独立性とチャレンジを担保する必要を感じています。

 世の中のほとんどの仕事は“オペレーション“だ。その立場からすれば、クリエーションは無駄なことをやっているように見えてしまう。そして、クリエーションは海図のない航海のようなもので、相当な困難を伴う。だからこそクリエーション部隊をどうやって活性化させていくかが、社長の仕事であると言う。