ゼロから1を生むために必要なのはダイバーシティ

角倉:ダイバーシティということで考えると、研究者としての私の経験から言うと、「日本人だけで研究していてもだめだ」という実感があります。ターゲットさえ決まれば、日本の研究者のがんばりはすごいです。しかし、果たしてそれでよいのでしょうか。

 米国のある大学教授に「日本の研究者は、実験は好きだが、リサーチをしない」と言われました。それは、厳しい一言でした。よく言われることではありますが、日本の研究者は1を10にする、10を100にすることは得意だけど、ゼロから1を生めないのです。大学の中では多くのものが生まれていますが、これをビジネス化できない。宝の山の持ち腐れになってしまうものがほとんどです。

 真に重要なのは、ゼロから1を生むことです。そのためには色々なバックグラウンドを持って、発想の違う人たちを集めないとダメだと思います。そこで、私たちも、2年前にシリコンバレーにそのような拠点を作りました。

横山:私たちは業態が異なるため、異なった土俵での議論になりますが、いずれにしても、近視眼的な経営の時代ではないですよね。階段を駆け足で上がるだけでなく、より中長期な視野を持って、時には踊り場も必要なのだと思います。

こんな時代には、アナログ回帰の評価制度も悪くない

 多くの企業が、新しい時代に見合う人材の評価基準に悩んでいる。今回の2社は、その点、どのように考え、工夫をしているのだろうか。

角倉:これまでは、いわゆる「目標管理制度」「成果報酬型」という考え方で、期首に一人ひとり、目標を3つ程度立て、年度末になったらそれをレビューして、「できていない、できている」とやっていたのですが、このやり方はもう時代に合わないと思っています。

 変化の激しい時代ですから、期首に設定したテーマが12カ月後もそのままでよいはずはない。状況は刻一刻と変わっているわけです。そこで今、少なくとも2週間に1度、10分でも15分でもよいから上司と部下で話をしてもらう。「どうだ、うまくいっているか?」「困っています」「だったら、こうしたらどうだ?」。そんなやり取りをしてもらって、やり方を少し変えてみて、2週間経ったらまた話をする。もちろん、目標自体を変えることもありです。

 これをローリングしていく。その会話を毎回、ログに残して12カ月後にそのログを見たら、その人の評価はでき上がっているし、本人も、上司が何を思っていて、自分は何をしなければいけないかについて、その都度、しっかりと理解できる。わざわざ期末に評価のために時間を取らずにすむ、そういうやり方に変えてみようということを今、検討しています。

 早い段階で、次世代リーダーを選抜していきたいという思いがあります。次の社長、役員、事業部長などの候補者を早く見出して、育成していけるような仕組みにしたいと考えています。そのためのコミュニケーション重視。アナログ回帰ですね。

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