“社外起点”のオープンイノベーションが必要な時代

角倉:もう一つ、世の中の実態や変化を知るためには、単独で行動していてはダメだと思います。やはりオープンイノベーションが重要だと考えています。

 従来、メーカーのオープンイノベーションというのは、「自分たちはこんな技術を持っているけれど、作りたいものには足りない技術がある。その技術を他所から調達しよう」という考えの上に成り立っていました。そうではなくて、自分たちにベースとなる技術がなくても、世の中のトレンドに合わせ、技術を買ってきて、それを必要に応じて作り替えることで世の中のニーズに応えることができることも考えるようになりました。

 つまり、自分起点でオープンイノベーションを行うのではなくて、社外起点でオープンイノベーションを行うということ。それが目下の課題です。そのためにも、登場するプレーヤーを想定しない、海外勢でもベンチャー企業でも、大学の研究機関でも誰でもいい。誰が登場するかを想定しない、本当の意味でのオープンイノベーションを行うための、オープンなプラットフォームを作るというのが、これからの課題だと思います。そうでないと、本当のイノベーションなど興るはずもないのです。

ヨーロッパでは今、「オープンイノベーション2.0」が全盛だ。1.0というのは、いわば大企業の自分中心、技術中心のイノベ―ション。それと比べて2.0は、まさに社会課題が中心にあって、それを解くためには誰と組めばいいのかをオープンに探っていくというものだ。

角倉:私たちも参画しているのですが、ベルギーにimec (Inter-university Micro Electronics Center)という、世界をリードするナノエレクトロニクスとデジタルテクノロジーの研究機関があります。そこには今、世界各国から500〜600人の研究者が来ているのですが、そこで生まれた成果は持ち帰り自由なのです。自由に自分たちの国、会社に持ち帰って商品づくりをしてよい。このような、本当の意味でのオープンプラットフォームが日本でも早く生まれてほしいと思っています。

 日本の科学技術は、やはり気の知れた仲間だけでやっているから、緊張感がなくなってきていて、ぬるま湯になっているのではないかと思います。ですから、この頃社内で言っているのは、「快適な状況ではイノベーションは興らない。変革しようと思えなくなる。そこに不自由や不便という困った状況がいっぱいあるから、イノベーションは興る」ということです。

日本郵便が考えるオープンプラットフォームとは

日本郵便の横山邦男氏(以下、横山):やはり、自己否定しなければいけないところがあります。経験が長いと文化を変えるのは難しいというのは否定できない事実。そういう中で変革を推進していくためには、広い意味でのダイバーシティの考え方が必要です。

<span class="fontBold">横山 邦男(よこやま・くにお)氏</span><br />日本郵便代表取締役社長兼執行役員社長。1981年、住友銀行(現・三井住友銀行)入行。2006年、日本郵政執行役員、2007年、同社専務執行役を経て、2009年、三井住友銀行執行役員、2011年、同行常務執行役員。2014年、三井住友アセットマネジメント代表取締役社長兼CEOを経て、2016年より現職。 創業時(明治4年)から受け継ぐ社会的使命を全うするため、郵政事業の革新に挑む。
横山 邦男(よこやま・くにお)氏
日本郵便代表取締役社長兼執行役員社長。1981年、住友銀行(現・三井住友銀行)入行。2006年、日本郵政執行役員、2007年、同社専務執行役を経て、2009年、三井住友銀行執行役員、2011年、同行常務執行役員。2014年、三井住友アセットマネジメント代表取締役社長兼CEOを経て、2016年より現職。 創業時(明治4年)から受け継ぐ社会的使命を全うするため、郵政事業の革新に挑む。

 そういう意味で、大学などの研究者とのつながりも、ますます重要になっていくと思います。前職の銀行時代の経験ですが、ビッグデータをどうアセットマネジメントに活用していくかという課題を研究しなければいけないというので、ある若手が手を挙げてくれて担当になりました。

 ある時、その若者がやって来て「会社を辞めさせてほしい」と言うのです。理由を聞くと、「仕事の合間にできる仕事ではない。どうしても東大の大学院に行って、ある研究室で学ぶ必要がある」と言うわけです。もちろん、会社の派遣という形で行ってもらいました。