左からカネカの角倉護社長、日本郵便の横山邦男社長(写真:北山 宏一、以下同)
左からカネカの角倉護社長、日本郵便の横山邦男社長(写真:北山 宏一、以下同)

 ポートフォリオの変革をもって企業の成長を担保する。そのために組織構造を大幅に変えたカネカ。そして、日本最大の社会インフラを擁する日本郵便は、自らをオープンプラットフォームとして捉え、多くのアイデアと実行力をベンチャー企業に期待している。

 素材メーカーと郵政事業。異なる業界に属する2社であるが、「イノベーション100委員会」(※)でカネカの角倉社長と日本郵便の横山社長が語った、イノベーション実現のために目指す方向性は、非常に似ていた。

 今回は、現状認識に強い危機感を持つ経営者の対談。まずは、ビジネス環境の変化に対する課題認識について聞いた。

イノベーションとは、「新しい需要を作る」こと

カネカの角倉護氏(以下、角倉):やはりリーマン・ショックが起点でしたが、既存事業だけでは将来が危ないと思いました。2008年当時の弊社の売上規模は大体4000億円くらいでしたが、そのままの推移に委ねるだけでは6000億円か7000億円程度が成長限界だろうと予想できました。

<span class="fontBold">角倉 護(かどくら・まもる)氏</span><br /> カネカ代表取締役社長。1987年、鐘淵化学工業(現・カネカ)入社。ベルギー駐在、高機能性樹脂事業部長などを経て、2012年6月に取締役常務執行役員に就任。2014年4月より現職。<br />「変革なくしてカネカの成長はない。停滞は衰退」「今までやってきたことを続けることは簡単で、快適。常に自分を追い込み、高みを目指して鍛錬を続けて、新しい世界に飛び込む勇気を持って挑戦しよう」と社員に呼びかける。
角倉 護(かどくら・まもる)氏
カネカ代表取締役社長。1987年、鐘淵化学工業(現・カネカ)入社。ベルギー駐在、高機能性樹脂事業部長などを経て、2012年6月に取締役常務執行役員に就任。2014年4月より現職。
「変革なくしてカネカの成長はない。停滞は衰退」「今までやってきたことを続けることは簡単で、快適。常に自分を追い込み、高みを目指して鍛錬を続けて、新しい世界に飛び込む勇気を持って挑戦しよう」と社員に呼びかける。

 では、どうするのか。メーカーですから、得意技術と言えるものを核にして、新しい分野に出ていかないといけない。以来ずっと言い続けているキーワードが、「変革と成長」です。その意味は、「変革なくして、成長はない。成長なくして企業は存続しない」というものです。コモディティ化の波に飲まれてしまえば、中国や新興国にどんどんシェアは奪われてしまいます。

※イノベーション100委員会とは
企業がイノベーションを興すための方法を探るために変革の思いを持ち、行動を起こしている企業経営者がイノベーション経営について議論する場。「イノベーション経営を進める大企業経営者が100人になれば、日本は再びイノベーション国家になる」との思いを持ち、経済産業省、株式会社WiL、一般社団法人Japan Innovation Network(JIN)が2015年より共同運営している。

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