今必要な「協創」。そのために意識すべき点は?
吉澤:ビジネスそのものが「協創」だと考えていますから、パートナーとともに、お客様、世の中に新しい価値を提供し続けることが、まさに私たちのイノベーションだと考えています。企業の大小や組織の形態に関係なく、オープンにパートナーからさまざまなアイデアを取り入れ、イノベーションをともに生み出していくことが重要です。
本業ももちろん大切ですが、社会とのより良いつながりを持ち続けることも重要で、目の前で起こっているさまざまな環境変化に常に目を向けておく必要があると思っています。
水田:繰り返しになりますが、協創しかないと言っていい時代だと思います。たとえば重要課題のひとつが、シニア層がいかに活躍できるかなのですが、これも私たちだけで解決できるものではありません。
此本:確かに、お客様との協創というのは、昔に比べるとかなり増えていると思いますね。ただ注意を要すると思っているのは、変革への気持ちが本物かどうかということです。
なんとなく変革をやってみたいというお客様とコラボレーションをしても、結局はうまくいきません。「皆がやっているからやってみようか」とか、「誰かに言われてその気になった」というようなケースです。先ほども言いましたように、DXにはどうしても劇薬的な要素がありますから、私たちもお客様も本気でないと必ずどこかで頓挫します。
私は、変革するというのは、守るべきものがあるから変革すると思っています。その会社それぞれのコアの部分がある。そのコアの部分がフルにバリューが発揮できないから、変革が必要なわけですよ。本当はコアの部分があるのに、その価値が発揮できていないのは何なのだと突き詰めて考えている人というのは多分、本気でやろうとしている人だと思っています。
水田:大事なのは、やはり、覚悟と責任ですね。すぐにネガティブな発想をする方、すぐに数字や採算の話をする方は要注意ですね。
吉澤:改革には痛みも伴いますし、時間もかかります。最近、決算発表などの場でこれからの戦略の説明をする際に、証券アナリストの方から短期的な結果に関する質問を受けることがあり、そういった場面では、私たちの時間軸とのずれを感じることがあります。
また、パートナーとの強固な信頼を築くのにも2年や3年という時間はかかります。その結果、お客様満足度や企業価値を向上しながら社会に貢献できる戦略こそが、今は必要なのだと私たちは強く信じています。
水田:確かに、投資家には「余計なことはしないでくれ」とよく言われます。「むしろ自己株を買うか、配当を上げろ」と言う。そういうプレッシャーは日々感じています。
ただ吉澤さんがおっしゃるように、一番大切なのは、将来を見越して、お客様や社会のお役に立てることだと思っています。そうした価値提供がどれだけできるのか。それを諦めたら、もう会社経営はやめたほうがいい。そのためにも、覚悟と情熱を持って、継続してやり続けるしかないのではないでしょうか。
「協創」なくして発展はない時代に突入した

今回の座談会に参加いただいた経営者たちは、DX(デジタル・トランスフォーメーション)の真っただ中で様々な試行錯誤を行なっていることが分かった。
一見すると無関係に見える3社が、実は同じDXの中で独自の工夫をしている。とくに、「もはや自分たちだけでできることはほとんどない」という時代の中で、社会の変化に対応したそれぞれのトランスフォーメーションに挑戦している。
コンサルティング業としてビジネスとITが融合する時代が始まり、人材派遣・紹介業にとってテレワークやダブルワークが当たり前になるなど、本業のビジネスモデルが激変する可能性があるなかでは、「協創」がキーワードだ。
ただし、闇雲に協創するのではない。「自社しか提供できない価値」という守るべきものがあるから変革や協創を行うという、非常に意義のある対談になったと思う。

Powered by リゾーム?