その象徴としたのが「+d」です。パートナーの強みにドコモの強みをプラスすることで価値を高める。その価値とは、分かりやすく言えば、「お得・便利」「楽しさ・驚き」、そして「満足・安心」です。

 その結果として、パートナーのビジネス拡大、さらには社会課題の解決につながるような取り組みを加速させたいと考えています。「+d」パートナー数は順調に拡大し、すでに300社を大きく超えています。

 そのために力を入れていることのひとつが、R&D・システムエンジニア・営業の一体化、いわゆる「トップガン営業」の推進です。これは、R&D・システムエンジニア・営業で小規模チームを構成し、一体となってソリューションを創り出し、マネタライズまで一気通貫で素早く実施する取り組みです。R&Dの部隊もどんどんお客様に出向いて提案活動をするよう、日々、促しています。

此本:共感できるお話ですね。私は、DXというのはテクノロジーの話ではなく、ビジネスの問題だと思うのです。だから「テクノロジーによって何ができるか」ではなくて、お客様のビジネスのどの課題を解決するのかという、そこを議論の出発点にしなければいけないと思っています。そこで主客転倒が起こると、話が途中から空転してしまいますね。

 そういう意味で言うと、今、私たちは「コンソリューション」という言葉を社内で使っているのですけど、コンサルティング部門とソリューション部門が一体になろうという活動を進めています。

 まずはコンサルティングで、お客様の本質的な課題は何かというところまで掘り下げておく。そこからその課題解決のために、コンサルタントとシステムエンジニアが一体でソリューションを考えるわけです。これと同時に力を入れているのが、縦割り組織の壁を壊すことです。

 今までの仕事というのは、お客様から提案依頼が出てきたら、その依頼に対してひとつの部門で解決策を提案して、選んでいただいたらその通り作ればよかった。しかし今は、ビジネスとITを一緒に議論しないといけないので、要件も揺れ動きますし、バトンタッチ型では仕事が進みません。

 だから組織をまたいだり、乗り越えたりしたプロジェクトの成功事例をできるだけ多く、全社の会議などで話すようにしています。

10年もしたら「定年」という概念もなくなる

水田:社内変革という意味では、私たちも苦労をしています。私たちの会社ははっきり言って、文化の違う会社が集まった集団ですから、社内変革のフェーズ1は「融合」が主テーマでした。

 目的はひとつで、今後最も重要になるであろう「多様性のある働き方」をサポートしたいということです。そのために大事なことが、デジタル化とのミスマッチの極小化です。これが私たちの存在意義だと思っています。

 ただ派遣だ、紹介だと済ませるのではなく、個々人のライフステージに沿って、生涯価値を高めるために、その時々にあった働き方をサポートしていきたいのです。だからこそ、ひとつの会社、グループにも多様性が必要なわけです。これが私たちなりのトランスフォーメーションです。

 10年もすれば、もうテレワークもダブルワークも当たり前だし、おそらく定年もなくなり、外国の方ももっと普通に一緒に働いている世の中になると思います。そうした時代をスムーズに推進するために、次は私たちが有する膨大な情報をどう活用していくのかが課題です。

 ますます知恵を出して、実効性のある柔軟な働き方を提案していく。そうやって労働力不足に備えられる社会の実現にますます寄与していきたいと思っています。

 誤解を恐れずに言えば、今、世間で推進されている「働き方改革」は楽しくない。もっと皆がハッピーになれなければ、改革は進まないと思います。単に時間が来たらオフィスから追い出して労働時間を短縮するのではなく、働き方の柔軟性を増やして、個々人が自分の意に合った働き方ができる世の中を作りたいのです。それこそが私たちの考えるイノベーションです。

次ページ 今必要な「協創」。そのために意識すべき点は?