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 「戦後外交の総決算」を掲げる安倍晋三首相が、北方領土問題の解決に意欲を示している。平和条約締結後の色丹、歯舞両島の日本への引き渡しを明記した1956年の日ソ共同宣言を基礎に協議を加速するという。過去の経緯も踏まえながら交渉の行方を見守っていく必要がある。

12月1日、ブエノスアイレスで会談した安倍晋三首相とプーチン大統領(写真:代表撮影/ZUMA Press/アフロ)

 2018年を表す漢字に「災」が選ばれたが、安倍首相自らは起承転結の「転」がふさわしいと表明した。「日ロ関係の大きな転機が訪れてきたと感じる1年だった」というのが、ひとつの理由だ。来年は「日本は大きな転換点を迎える」とも語った。北方領土問題を含む日ロの平和条約締結交渉で大きな進展を見込んでいるような発言だ。

 確かに日ロ交渉は11月以降、新たな局面を迎えた。安倍首相とプーチン大統領が11月14日にシンガポールで開いた首脳会談で、1956年の日ソ共同宣言を基礎に平和条約交渉を加速させることで合意したからだ。

 同宣言はプーチン大統領がかねて「法的拘束力がある」と認めていた。日ロ両政府はここ数年、いつ実現するかも分からない北方4島での共同経済活動の準備協議にほとんどの時間を割いてきたが、北方領土の帰属を含めた本筋の平和条約締結問題に再び交渉の焦点が移ったわけだ。

 両首脳は12月1日にアルゼンチンでも会談し、河野太郎、ラブロフ両外相を責任者とする交渉の枠組みで合意。その下で実務協議を進める外務省の交渉担当者を首相特別代表、大統領特別代表とした。首相は2019年1月後半に訪ロして交渉に弾みをつけ、同年6月末、大阪で開く20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせたプーチン大統領の来日までに一定の成果を上げたい意向とされる。