クリミアを併合した“記念日”に大統領選を実施

 プーチン大統領が出馬表明した当日は、それまで別の衝撃的なニュースがロシアを駆け巡っていた。前日夜にスイスのローザンヌで開かれた国際オリンピック委員会(IOC)の理事会で、組織的なドーピング関与が疑われるロシア選手団の来年2月の平昌冬季五輪参加を認めない決定が下されたことだ。

 潔白が証明された選手は「ロシアから来た五輪選手」として個人参加が認められるものの、ロシア国旗や国歌は禁止されるという厳しい内容に、落胆したロシア市民は少なくなかった。

 それだけに、平昌五輪へのロシア選手団の出場禁止というニュースから国民の目をそらすべく、プーチン大統領が慌てて大統領選への出馬を表明したとの説もある。ただ、今回の出馬表明は最大限の演出効果を狙ってかなり入念に準備されたとみられるだけに、IOCの決定に左右されたという見方は必ずしも多数派ではない。

 いずれにせよ、本命のプーチン大統領が出馬表明したことで、大統領選がいよいよ本格化する。ロシア上院は15日、大統領選の投票日を来年3月18日とすることを全会一致で承認した。3月18日はロシアが2014年、ウクライナ領のクリミア半島を自国に併合した記念日でもある。

 大統領選にはロシア自由民主党のウラジミル・ジリノフスキー党首、ロシア共産党のゲンナジー・ジュガノフ党首といった〝常連組〟のほか、プーチン大統領の恩師の娘で女性テレビ司会者として知られるクセーニア・サプチャク氏らが立候補する見通しだ。野党指導者で反政権派ブロガーのアレクセイ・ナワリヌイ氏も出馬に意欲を示しているが、当局側は同氏が横領罪で有罪判決を受けたことを理由に立候補を認めない方針とされる。

 新顔のサプチャク氏は反政権派とされているものの、大統領府が選挙戦への国民の関心を高めるため、プーチン大統領の「スパーリングパートナー」として出馬を要請したとの説も根強い。有力な対抗馬が不在のまま、選挙戦はプーチン大統領の圧勝で終わるとの予測が大勢を占めている。

 政権側にとって再選戦略の課題はむしろ、プーチン大統領が出馬表明時に演出したシナリオ通りに、「大多数の国民の支持」で再選を果たしたと内外に誇示できるかどうかにあるようだ。大統領は大統領府の選挙担当に投票率、得票率いずれも70%台の実現を求めているとされる。国民の支持率がいくら80%を超えているとはいえ、その達成は簡単ではない。

 実質的に4期目となるプーチン大統領の再選には、どうしてもマンネリのイメージがつきまとう。圧勝が事前に伝えられるだけに、このままでは投票所に足を運ばない有権者が多数出てくることも予想される。

 現にロシア民間世論調査会社のレバダ・センターが12月初めに実施した調査によると、来年3月の大統領選で「確実に投票する」「たぶん投票する」との回答は合わせて58%だった。これに対し、「投票しない」「たぶん投票しない」と「わからない」の合計も39%に上っている。

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