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 クリミア半島周辺で11月末、ロシアがウクライナ艦船を銃撃し、拿捕(だほ)する事件が起きた。背景にあるのはクリミアの帰属を巡る対立だ。ロシアはウクライナによる挑発と主張するが、国際世論はウクライナ擁護に傾き、プーチン政権が防戦に追われている。

軍服姿で陣頭指揮に当たるウクライナのポロシェンコ大統領(写真:ロイター/アフロ)

 事件が起きたのは11月25日。黒海のオデッサ港からアゾフ海のマリウポリに向かっていたウクライナ海軍の小型艦船2隻とタグボートをロシアの警備艇が追跡。ロシア本土とクリミア半島の間のケルチ海峡周辺で、ロシア側が銃撃し、船舶を拿捕した。

 銃撃でウクライナの兵士3人が負傷した。命に別条はないという。ロシア側は船舶を拿捕するとともに、24人のウクライナ人乗組員を拘束した。ロシア連邦保安局(FSB)はウクライナ艦船が停船命令を無視して「領海侵犯」したと主張。対するウクライナのポロシェンコ大統領は「ロシアによる侵略的な軍事攻撃」などと激しく非難している。

 ロシアとウクライナは2003年に締結した条約で、アゾフ海を両国の内海とし、すべての艦船の航行の自由を認めている。ウクライナ艦船への攻撃と拿捕はこの条約に違反するうえ、そもそもロシアが2014年春にウクライナ領のクリミア半島を一方的に自国に併合したこと自体が「違法だ」というのが、ポロシェンコ政権の論拠だ。

 ロシア警備艇の行為を「軍事攻撃」「危険な侵略」とみなしたポロシェンコ大統領は、ロシアを非難するだけでなく、国内の安全を確保するという理由で矢継ぎ早に緊急対策を打ち出した。まずは「戦時状態」と称する戒厳令の導入だ。大統領は当初は60日の施行を提案したが、議会が期間を30日間に短縮し、対象地域もロシアとの国境地帯などに限定して布告した。

 さらに戒厳令の施行期間中、16~60歳のロシア人男性のウクライナ入国を全面禁止する措置まで打ち出した。クリミア併合やウクライナ東部での軍事衝突では、ロシアの武装集団が国内に入って〝暗躍〟した経緯があり、新たな暴動や不穏な動きを阻止するのが目的という。政府は外交官のほか、親族の葬儀といった特別な事情がある場合は入国を認めるとしているが、これにはさすがに行き過ぎといった批判も一部に出ている。

 では、ロシアはどう反応しているのか。