ロシアで先月、対日経済協力の窓口も務めていたウリュカエフ経済発展相(当時)が収賄容疑で突然拘束され、解任された。日ロの北方領土問題進展を阻止する勢力が仕組んだとの見方も一部にあるが、真相はどうなのか。

ロシア連邦捜査委員会は11月15日、ウリュカエフ経済発展相を収賄容疑で拘束したと発表した。(写真:ロイター/アフロ)

 ロシア連邦捜査委員会がウリュカエフ経済発展相(当時)を収賄容疑で拘束したと発表したのは、先月15日未明のことだ。中堅石油会社「バシネフチ」の民営化(政府保有株の売却)に当たり、国営石油最大手「ロスネフチ」が一括購入できるよう便宜を図り、見返りに賄賂として200万ドルを受け取ったというものだった。

 ウリュカエフ氏は刑事訴追され、裁判所は自身の健康状態や高齢の両親を抱えているといった家庭環境を考慮し、来年1月中旬まで2カ月間の自宅軟禁を命じた。

 プーチン大統領は「信頼を失った」として、ウリュカエフ氏を直ちに経済発展相のポストから解任した。大統領は先月末には、同相の後任としてマクロ経済政策に精通した若手の財務省次官を抜てきした。

あまりに不可解…くすぶる陰謀説

 こうした事実関係だけを拾えば、ロシアでありがちな閣僚や官僚の収賄スキャンダルにしか見えない。ただ、当時のウリュカエフ氏の政権内の立場や身柄拘束の経緯などを踏まえると、実際は不可解な点も少なくない。何者かによる陰謀説がくすぶるゆえんでもある。

 まずは身柄拘束に至った当日の経緯だ。ロシアメディアによれば、ウリュカエフ氏は先月14日夕刻、省内で開かれていた会合を中座し、公用車でロスネフチのオフィスに向かった。ロスネフチのオフィス内で、同氏は100万ドルの入ったカバンを渡され、残る100万ドルは車に運ぶと言われた。

 その現場に治安機関の連邦保安庁(FSB)職員らが押し入り拘束された。ウリュカエフ氏は現金には触れていないと反論したものの、カバンの把手に触れた痕跡が決め手になったとされる。同氏は裁判所でも容疑を否認した。一方のFSBは「おとり捜査」だったと認めるとともに、1年以上前から監視を続け、数カ月前からは電話の盗聴もしていたと明かしたという。