クリミア併合で一歩引いた日本への不信感

 大統領はかねて、「高いレベルの相互信頼と協力関係」を領土問題解決の条件として掲げる。とくに中国との国境画定交渉を引き合いに出し、「40年間も交渉を続けた」「最終調印したとき、ロシアと中国は非常に高いレベルの信頼関係にあった」「残念ながら日本とはそのようなレベルに達していない」と、記者会見や有識者会議などの場で繰り返し述べている。

 安倍首相との首脳対話も回数は確かに多いが、ロシア側には苦い思いもある。
第2次安倍政権発足後、プーチン大統領は日ロ関係改善に意欲を示す安倍首相との会談に頻繁に応じたものの、ロシアがウクライナ領クリミア半島を併合した2014年春以降、日本側が対話の窓口をほとんど閉じてしまったからだ。

 「(領土問題で)妥協するには恒常的で途切れることのない対話が必要だ。しかし日本はある段階で、我々との接触を制限する決定を下した」

 こう断じて日本への不信感を強めていた大統領は恐らく、安倍首相がソチを訪問した今年5月の首脳会談で、ようやく交渉のスタート台に戻ったと認識しているのだろう。その意味では、関係改善の歩みは端緒についたばかりなわけだ。

 もちろん、プーチン大統領も平和条約の締結には前向きだ。ペルーでのAPEC首脳会議後の記者会見では、両国間にいまだに平和条約がないのは「時代錯誤だ」とし、「ロシアも日本も条約の締結を望んでいる」と述べている。

 ただし、北方領土は「第2次世界大戦の結果、現在はロシアの主権下にあるロシアの領土だ」と強調。平和条約締結後の歯舞、色丹両島の日本への引き渡しを明記した日ソ共同宣言が1956年に締結されているが、「その2島にどちらの主権が残り、どのような条件で引き渡すか明記されていない」と指摘した。

 一方で、国後、択捉両島も含めた北方4島の帰属問題の解決を主張する日本の立場も承知しているとし、「すべて交渉の対象になる」としている。

次ページ 協議内容の一部を明かしたプーチン大統領の思惑