懸念されるのは、今後の米ロ関係に及ぼす負の影響だ。プーチン大統領は米ロ関係が「まだ危機的状況から脱していないということだ」と強調。同時に両国間には経済や安全保障など協議すべき問題が幾つもあるとし、とくに安保分野では米ロの新戦略兵器削減条約(新START)や中距離核戦力(INF)廃棄条約に関する話し合いが欠かせないとの認識を示している。米国がロシアとの首脳会談を拒否し続ければ、核管理体制を揺るがす事態もあり得るという警告のようにも聞こえる。

 米司法省は先に、米大統領選へのロシアの干渉疑惑に絡んで、ロシア政府系の外国語テレビ局「ロシア・トゥデイ(RT)」を外国の代理人として登録するよう求めた。プーチン大統領は「言論の自由に対する挑戦だ」と憤りを隠さず、「鏡のような対抗措置を取る」と表明。これを受けて、ロシア下院は直ちに外国メディアの規制を強化する法改正案を承認した。

 これまで、外国から資金を得る非政府組織(NGO)などを対象にしてきた活動制限措置を海外メディアにも適用。指定されたメディアは「外国の代理人」としての登録を強いられ、定期的な財政状況などの報告義務が生じる。違反すれば最悪、活動停止に追い込まれるとみられ、米国を中心にした海外メディアの締め付けに利用される恐れがある。米ロ間の大きな火種になることは間違いない。

 米ロ大統領が声明を出したシリア情勢をめぐっても、両国の亀裂が早くも表面化している。シリアでの化学兵器使用疑惑を調べる国連と化学兵器禁止機関(OPCW)の共同調査機関について、米国が1年間の任期延長を求めたのに対し、ロシアが国連安全保障理事会で拒否権を行使したのだ。直接的にはアサド政権が化学兵器を使用したとする報告書を共同調査機関がまとめたことに反発したものだが、米ロの根深い対立が波及したともいえる。

 今後、米ロの相互不信をさらに助長しかねない懸案もある。世界のスポーツ界を揺るがすロシアのドーピング問題だ。世界反ドーピング機関(WADA)は先に、ロシア反ドーピング機関の資格停止処分の継続を決めた。国家ぐるみの関与を公式に認めるようロシアに要求したものの、ロシアが拒否したためという。このままでは来年2、3月の韓国・平昌冬季五輪・パラリンピックへのロシア選手団の参加が危ぶまれる状況となっている。

 プーチン大統領はこれに対して、「五輪の開催はいつか。来年2月だ。ではロシアの大統領選はいつか。3月だ。あたかも国家が違反に加担したとしてスポーツ愛好家や選手の不満を呼び起こし、誰かにとって必要な状況をつくるために仕組んだのではないかという大きな疑念がある」と表明。米大統領選へのロシアの介入を主張する米国が今度は、ロシア大統領選に干渉すべく引き起こした疑いを指摘している。つまり米国による陰謀説を主張しているわけだ。

 ロシア国内ではなお、対ロ関係を悪化させているのは米国政界で、トランプ大統領自身は悪くないとの見方もある。ただ、全ロシア世論調査センターの調査でも明らかなように、「トランプ期待」はロシアでもすでに冷めている。トランプ政権下でも続く米ロの冷たい関係。それを象徴した今回の公式首脳会談の見送り騒動は、今後のさらなる関係悪化を予兆しているようにみえる。