
「今回の外遊は非常に重要だ。我々はプーチン大統領と会合の場を持つことになるだろう」。米国のトランプ大統領はアジア歴訪に出発する直前の11月3日、米FOXニュースにこう語っていた。
米大統領は「これ(米ロ首脳会談)は重要だ。なぜなら、彼ら(ロシア)は北朝鮮やシリア情勢で手助けしてくれるかもしれないからだ。我々はウクライナ問題も話し合う必要がある」と表明。具体的に協議する内容にまで踏み込んで、プーチン大統領との首脳会談への期待を表明していた。
トップ自らが公言しただけに、ロシア側は当然、首脳会談は確実に実施されると思い込んだことだろう。今回、両首脳が共に出席する国際会合は10、11日のベトナムでのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議だけだった。この機会に米ロ首脳会談を開くとすれば、場所や時間はおのずと限られていた。
実際、ロシアのウシャコフ大統領補佐官(外交担当)はAPEC首脳会議に先立つ9日、「会談時間は最終調整中」としながらも、「プーチン大統領は10日にベトナムでトランプ大統領と会談する」と言明。会談では「シリアと朝鮮半島情勢、さらに危機的状況で崩壊の瀬戸際にある2国間関係を話し合うだろう」と記者団に明らかにしていた。
ところがロシア側の積極的な反応とは裏腹に、米政府の姿勢は明らかに後ろ向きだった。ティラーソン米国務長官は直前になっても、「少なくとも公式の2国間会談を開くという合意は全くない」と強調。米ロの首脳が国際会議に共に出席するのだから会談しても不自然ではないが、「問題は本質的に話し合う議題があるかどうかだ」と公言していた。
そして10日の当日。フィリピンのドゥテルテ大統領、日本の安倍晋三首相、ベトナムのチャン・ダイ・クアン国家主席、中国の習近平国家主席……。プーチン大統領はAPEC首脳会議の合間に2国間の首脳会談を次々と重ねたが、結局、トランプ米大統領との公式会談は開かれなかった。
ちなみに通常は多忙を理由にしばしば会談時間に遅れるプーチン大統領だが、この日の日ロ首脳会談では、大統領のほうが安倍首相の到着を待っていたという。しかも大統領は会談の冒頭、「シンゾー、まずは衆院選での君の勝利を祝いたい」と、ファーストネームで親しげに首相に話しかけていた。
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