“政治素人”を相手に狙う、対米工作の本格化

 ラブロフ外相は先に「米国に有利になる分野だけ、ロシアと選択的に協力を続ける路線は通用しない」と批判したが、これはオバマ政権に対するプーチン政権の鬱積した不満を代弁したともいえる。仮にクリントン氏が当選すればオバマ外交をほぼ踏襲するとみられただけに、ロシアにとっては「冬の時代」の長期化を覚悟せざるを得ない状況だったわけだ。

 もちろんトランプ氏が当選したからといって、同氏が選挙戦で展開した主張を大統領としてそのまま行動に移すとは限らない。“トランプ・リスク”を背景にした世界の金融・商品市場の動揺が続けば、ロシア経済にとってもマイナスに響く恐れは否定できない。

 ロシアの外交専門家の間でも、全く政治経験のないトランプ氏よりも、外交に詳しいクリントン氏のほうが長期的にみて、ロシアにとってプラスだったのではないかと予測する向きもある。それでも米ロ関係改善への期待がロシアで広がるのは、実質的に16年間も政権を率いる熟練政治家のプーチン大統領なら、政治素人のトランプ氏をうまく操れるとの思惑もあるのかもしれない。

 そのプーチン大統領はさっそく、当選を決めたトランプ氏に祝電を送った。米ロ関係を危機的状況から脱するための「共同作業」に期待するとともに、こんな言葉を付け加えている。

 「対等、相互尊重の原則と、互いの立場を真に考慮した米ロの建設的な対話は、両国国民のみならず国際社会の利益に合致するだろう」――。トランプ氏の当選を追い風に、プーチン政権が自ら望む形での米ロ関係の再構築に向け、対米工作を本格化させていくことは間違いない。