プーチン大統領の後継候補は?

 政治学者の間ではすでに、「プーチン後」を予測する動きも出始めている。

 もちろん、いくら年金制度改革で国民の批判が強まったとはいえ、野党勢力がその勢いで政権を奪取するというシナリオを描く専門家は皆無だ。ロシアはエリツィン政権下の急進的な市場経済改革が大きな社会混乱を招いた苦い経緯があり、改革派の野党勢力に対する国民の支持率は1~2%ほどしかない。しかもプーチン政権は選挙制度に様々な規制を設け、政権に批判的な野党勢力の台頭を許さない仕組みを築いているからだ。

 このため後継候補はプーチン大統領本人が決めるというのが、大方の専門家の共通認識だ。政治工学センターのアレクセイ・マカルキン第1副所長は「メドベージェフ氏を大統領候補に指名した2007年末当時は、いつでもプーチン氏に大統領の座を譲れるような代行役の選択だった。今回はもっと真剣な選択になる」と指摘。シナリオのひとつとして、2021年の下院選(議会選)直前に後継者を新首相に任命し、段階的に権限を移譲していく可能性があると予測する。

 では、現時点で有力な後継候補は誰か。マカルキン氏が「注目すべき人物」として挙げるのは、トゥーラ州のアレクセイ・ジューミン知事(46)だ。

 1972年8月生まれで、もともとは連邦警護局出身。プーチン大統領の1~2期目に大統領警護局の将校として長らく大統領に仕えた。その後、国防省次官などを歴任後、プーチン大統領によってトゥーラ州知事代行に任命され、2016年9月に同州知事に就任した。「ジューミン知事が就任後、他の州では想像できない資金が集まり、都市整備も急ピッチで進んでいる。いまは成功した模範的な州として宣伝されている」とマカルキン氏はいう。

 政治情報センターのアレクセイ・ムーヒン所長も「ロシアではプーチン大統領が後継者を選ぶシナリオ以外は考えにくい」と言明。その上で、後継候補の条件は「プーチン氏の信認が厚く、特殊機関出身で、国家機関や大企業の幹部を務め、さらに地方政治家の経験がある人物」だと予測する。

 現時点でムーヒン所長が挙げる候補者は3人。ヤロスラブリ州のドミトリー・ミローノフ知事(50)、エヴゲニー・ジニチェフ非常事態相(52)、そしてジューミン知事だ。「3人とも連邦警護局出身で、互いに仲も良い」(同所長)。

 ミローノフ氏は内務省次官などを経て、プーチン大統領によって2016年にヤロスラブリ州知事代行に任命され、翌2017年9月から正式に知事に就いている。ジニチェフ氏も2016年、プーチン大統領によってカリーニングラード州知事代行に任命されたが、「自己都合」を理由にわずか数カ月で辞任。それでも大統領は同氏を直ちに連邦保安局次官に任命した。さらに2018年5月には、非常事態相に抜てきされている。

 3人とも国際的な知名度はほとんどないが、ムーヒン所長は「ロシア国内ではマスメディアを通じて、いずれも成功している政治家として慎重に宣伝され始めている」という。

 プーチン大統領の残る任期は5年半。権力継承の問題はまだまだ先のようにみえるが、専門家の間で後継候補が取り沙汰されているのは、水面下で「ポスト・プーチン」に向けた駆け引きが始まった証しといえなくもない。