ロシア政府は今月、国内最大の国営石油会社「ロスネフチ」に中堅国営石油会社の株式を売却した。財政赤字の穴埋めに充当する狙いだが、本来は「民営化」を掲げていた。なぜ民間企業でなく、国営企業に売ることになったのか。
ロシア最大の石油会社「ロスネフチ」が所有するクラスノヤルスクの油田(写真:ロイター/アフロ)

 今月10日、唐突に公表されたロシア政府の指令書が、国内のエネルギー関係者を驚かせた。メドベージェフ首相が署名したもので、ロシアの国営中堅石油会社「バシネフチ」の政府保有株を、国内最大の国営石油会社「ロスネフチ」に売却するという内容だった。

 日本ではほとんど報道されなかったが、このバシネフチの株式売却はロシアではエネルギー関係者だけでなく、政界ウォッチャーからも高い注目を集めていた。政権の中枢を巻き込み、侃々諤々(かんかんがくがく)の論争が繰り広げられた、いわく付きの案件だったからだ。

国内経済低迷で打ち出された「大民営化」政策

 話を少し戻そう。ロシアは近年、主要輸出商品である原油・天然ガスなどエネルギー価格の急落と、ウクライナ危機を受けた欧米の経済制裁の影響で、厳しい経済環境が続いている。昨年の実質国内総生産(GDP)成長率はマイナス3.7%に落ち込み、今年もマイナス成長が避けられない情勢だ。

 こうした中、政府が苦肉の策として打ち出したのが「大民営化」政策だ。有力国営企業の民営化や政府保有株の売却を進め、それによって調達する資金を今年の財政赤字の穴埋めに利用しようという計画である。同時に、経済の国家依存を下げることで、国内産業の構造改革につなげる狙いも込められていた。

 政府はその対象企業として、ダイヤモンド採掘大手の「アルロサ」、海運大手の「ソブコンフロート」のほか、アエロフロート、ロシア鉄道、VTB銀行、バシネフチ、ロスネフチを選定した。財務省は一連の政府保有株の売却により、総額でおよそ1兆ルーブル(1ルーブル=約1.67円、約1兆6700億円)の歳入増が見込めると試算した。