期待を裏切られたプーチン大統領

 米側はアサド政権の後ろ盾となって戦闘に加わるロシアを非難し、ロシアはシリアの反体制派が停戦を妨害したとして、それを統制できない米国を批判している。

 要はアサド政権の存続を認めるか、認めないかという米ロの立場の違いが背景にあるわけだが、より根源的な対立の根は米ロ関係が全般的に大きく冷え込み、完全な相互不信に陥っている点にあるといえる。

 それを如実に示したのが、余剰プルトニウム処分に関する大統領令について解説したラブロフ外相の言葉だろう。「これはワシントンに対する警告だ」とし、ロシアに制裁などの圧力を語る一方で「米国にとって有益になる分野だけは、我が国と選択的に協力を続けるという路線は通用しない」と述べているのだ。外相は一切触れていないが、米ロの相互不信が招いたシリア停戦合意の瓦解を念頭にしたとも受け止められる。

 実はプーチン大統領は、9月のシリア停戦合意の履行にかなり期待していたフシがある。この合意は長時間にわたった米ロ協議でロシアが主導する形でまとめたもので、48時間ごとに停戦を延長し、停戦が1週間続けば米ロが連携組織を設け、シリアのテロ組織の掃討に向けた軍事協力を進める内容だった。

 シリアのテロ組織掃討に向けて米ロが共闘するという構想はまさに、プーチン大統領がちょうど1年前、国連総会での演説で提唱したものだ。この時は米国などが応じず、ロシアは単独でシリアへの軍事介入に踏み切った経緯がある。今回はその構想実現に布石を打つ停戦案に米側もいったんは同意したのだから、プーチン大統領が歓迎したのは当然だろう。

 現に大統領は停戦発効後の9月中旬、シリア反体制派に対する米国の対応に苦言を呈しながらも、「我々にはシリアの和平実現と、テロとの戦いという共通の課題がある」と語り、米国との共闘に前向きの姿勢を示していた。それが結局は米ロの非難の応酬で頓挫してしまっただけに、大統領の米国への怒りが頂点に達していたことは十分に想像できる。