発端はシリア停戦めぐる米ロ合意の破綻?

 ロシアは今、原油安とウクライナ危機に伴う欧米の制裁の影響で国内経済が苦境に立たされている。このため今回の大統領令の狙いは、米国に対ロ制裁の解除を促す思惑があるとみる向きもある。

 ただ、もともとロシアと経済的なつながりが深い欧州連合(EU)ですら、対ロ制裁を続けているのが現状だ。ウクライナ問題でよりロシアに厳しい姿勢を貫く米国が制裁解除に容易に動くとは考えにくい。プーチン政権もそうした状況を熟知しているはずだ。

 むしろ、オバマ政権下でロシアに対する「敵視」政策がどんどんと積み上げられるなか、我慢に我慢を重ねてきたプーチン大統領の、堪忍袋の緒がついに切れたというのが真相のようにみえる。そして、オバマ大統領に最も手痛い一撃を与える報復措置として、核軍縮分野の米ロ合意を利用したというわけだ。ロシアは実際、余剰プルトニウム処分の合理履行の停止に続き、米国との原子力分野の研究協力の停止なども打ち出している。

 では「プーチンの怒り」が背景にあるとすれば、そのきっかけは何か。やはり、シリア停戦をめぐる直近の米ロ合意の破綻だろう。

 米ロが9月10日に発表したシリア停戦合意は、米側が今月3日に協議停止をロシアに通告したことで最終的に破綻した。形式上はロシアが余剰プルトニウム処分をめぐる合意履行を停止したことへの対抗措置となっているが、シリア停戦は早々に形骸化し、米ロが非難合戦を繰り広げていたのは周知の事実だ。

 今回の停戦は発効から1週間もたたないうちに、米軍がシリア東部でアサド政権軍を「誤爆」し、それを「意図的」とするアサド政権軍が反体制派への攻撃を再開したことで、あっけなく崩壊した。