ロシアのプーチン大統領が突然、余剰プルトニウムの処分に関する米ロ合意の履行停止を表明した。一見、地味で専門的な内容にもみえるが、米ロが進めてきた核軍縮の大きな柱のひとつだ。なぜ今、合意の履行停止なのか。
シリア停戦合意は、米側が今月3日に協議停止をロシアに通告したことで最終的に破綻。余剰プルトニウムの処分に関する米ロ合意の履行停止のきっかけになったとみられている。(写真:ロイター/アフロ)

 ロシアのプーチン大統領が今月3日に公布した大統領令が国際的な波紋を呼んでいる。米国とロシア両政府が結んだ核兵器用プルトニウムの処分に関する合意について、その履行を一方的に停止するというものだ。

 この合意は、米ロの核軍縮の一環として2000年に結ばれた。核兵器の解体・廃棄によって生じる大量の余剰プルトニウムを原子力発電の原料に再利用する形で処分するというもので、再び軍事転用しないようにするのが狙いだ。ただ、技術や資金面の問題から履行されなかったため、米ロは2010年4月に改めて合意文書に署名し、翌2011年に「発効」した経緯がある。

 ちなみに米ロが再合意した時期(2010年4月)は、オバマ大統領とメドベージェフ大統領(当時)が新戦略兵器削減条約(新START)に調印した直後だった。しかも、オバマ大統領の肝煎りで、ワシントンで第1回核安全保障サミットが開催されているさなかに、会場内で調印された。「核兵器なき世界」を唱えたオバマ大統領にとって、まさに絶頂期の合意だったわけだ。

 2010年の合意文書に署名したのは、ヒラリー・クリントン国務長官(当時)とラブロフ外相。米ロがそれぞれ最低でも34トンの兵器級プルトニウムを処分することが再確認され、双方は2018年までに実際の処分を開始することが決まった。米国務省は当時、「米ロが処分する合計68トンのプルトニウムは、およそ1万7000発の核兵器の原料に相当する」とし、米ロの核軍縮の大きな成果だと強調していた。