日本企業とは良好な関係にある
中ロ間では世紀のディールと呼ばれ、東シベリアの巨大ガス田であるチャヤンダ鉱区のガスを中国に大量供給する事業も進んでいる。
メドベージェフ氏:事業は計画通りに進んでいる。新たに(チャヤンダから中国国境に至る)パイプライン「シベリアの力」を建設中で、これによる中国への最初のガス供給は2019年12月に始まる予定だ。ロシア側でも中国側でもパイプライン建設は順調で、契約通りに供給を開始できると確信している。
東シベリアにはチャヤンダ、コビクタという2つの巨大ガス田があるが、いずれも中国向けを想定しているのか。
メドベージェフ氏:契約と実際のガスの調達元が一致しないことはしばしばある。ただし、仮にサハリンと日本を結ぶガスパイプライン構想が実現する場合、日本向けに供給するのはもちろんサハリンのガスだ。チャヤンダやコビクタから供給することはない。ロシアは国内のガス消費も大きいし、加工品にしてアジア市場供給することも想定している。
さらに、ウラジオストクでのLNG基地新設計画もある。この計画はまだ準備段階で、具体的にいつ着工するかは決定していない。建設する場合はサハリンのほか、コビクタ、チャヤンダのガスを使う可能性がある。
日本企業は最近、ロシアではガスプロムよりも、北極圏のヤマルLNGプロジェクトなどを手掛ける民間大手ガス会社ノバテクとの関係を発展させているようにみえるが、競合しないのか。
メドベージェフ氏:ガスプロムはまず、ノバテク社の株主のひとつだ。次に(昨年末に生産を開始した)ヤマルLNGからは相当な量を購入してガスプロムのポートフォリオに組み入れている。
世界的にみて天然ガスを巡る環境は好転している。きれいなエネルギー源としての価値が上昇しているからだ。ガス需要は世界的に急増しており、5~10年後にはガスが不足する懸念すらある。生産増に向けた投資を今から実施しなければならない。25~30年先のビジネスを見据えて計画を立てる必要がある。
ガスプロムは日本企業とは良好な関係にある。三井物産とはバルト海LNGプロジェクトの協力で覚書を交わしたばかりだ。この事業には三菱商事や伊藤忠商事なども関心を示している。来年には参加企業を決めたいと考えているが、日本企業がコンソーシアムを組む可能性もある。バルト海LNGは欧州のみならず、南米市場などへの供給も想定している。日本向けも例外ではない。
欧州向けガス輸出をめぐっては、バルト海の海底経由でドイツとパイプラインで結ぶ「ノルドストリーム2」計画に米国のトランプ大統領が反対している。
メドベージェフ氏:ノルドストリーム2は国際競争力のある良いプロジェクトで、エネルギー安全保障にとっても重要だ。残念ながら、政治が邪魔をすることはある。米国とロシアはエネルギー分野で相当協力できる潜在性があるのに、政治が制裁を使って妨げているのは残念なことだ。逆にビジネスが政治に前向きな影響を与えられるようにしたい。
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