パイプライン敷設はもう少し様子見

日本側の強い要請があれば、ガスプロムも前向きに対応するのか。

メドベージェフ氏:様々な方面から分析し、かつ詳細な事業化調査をしてみないと何とも言えない。事業化するにせよ、事前に技術的側面や採算性、経済的な調査、投資分析などすべての分野の詳細な調査や分析を進めなければならない。現段階では本格的な分析も調査も始まっていない。今はいわば、ビジネスプランの段階にあるというべきだろう。しかも、採算性などの経済的要因だけでなく、政治的要因によっても大きく左右される。

 日本企業とのエネルギー協力は非常によい前例がある。ガスプロムが三井物産、三菱商事などと共同で展開しているサハリン2(=注1)プロジェクトは、世界で最も良い液化天然ガス(LNG)開発事業のひとつだ。(パイプライン構想については)もう少し事態の行方を見守っていこう。

(注1)サハリン2=ガスプロムと英蘭ロイヤル・ダッチ・シェル、三井物産、三菱商事が参画するサハリン沖石油・天然ガス開発事業。パイプラインとLNGプラント(2系列)を建設し、2009年からLNG出荷(年産約960万トン)を開始。6~7割が日本市場向け。

サハリン2ではかねてLNG生産基地の増設計画が浮上しているが、具体化のメドは立っているのか。

メドベージェフ氏:最終的な投資判断をすべき段階に来ている。ただし、最終決定の前に、増設するLNG基地向けにどこのガスを使うかを確定しなければならない。我々は、日本企業が同様に参画しているサハリン1(注2)のガスを使う計画だ。サハリン1で産出されるガスをサハリン2の基地増設用に利用するのが互いの事業者にとってもっとも効率的だ。ロシア政府も最も有望だと考えており、エネルギー省が調整中だ。

(注2)サハリン1=米エクソンモービル、日本の官民のサハリン石油ガス開発(SODECO)、インド国営石油会社と、ロシアの国営石油大手ロスネフチの子会社が参画するサハリン沖石油・天然ガス開発事業。ガスプロムは出資していない。天然ガスは2005年からロシア国内向けの供給を始めているが、輸出先はいまだ決まっていない。

 サハリン2はLNG基地を増設すれば第3ラインとなるが、すでに稼働中の第1、第2ライン向けのガス供給も考えなければならない。サハリン2は鉱区のガス埋蔵量を踏まえると、2025年から生産量を減少せざるを得なくなる。つまり既存のLNG生産基地向けのガスをどう安定的に供給していくかという課題に直面しつつあるわけだ。

 サハリン2のLNG生産は2009年から始まった。2025年には16年もの年月が経過することになる。このためサハリン1や、ガスプロムが権益を持つサハリン3のガス田を含めてガスの調達元を複合的に検討していく必要がある。まずはサハリン1のガスを増設用に利用できるかどうかを確定するのが先決だ。

サハリン3のガス埋蔵量が想定していたより少ないということか。

メドベージェフ氏:サハリン3のガス埋蔵量は想定より逆に多い。ただし、開発の時期の問題に加えて、ロシア国内と、特に中国を含めた海外のガス需要を考慮する必要がある。アジア地域のガス需要は非常に多い。韓国も中国も天然ガスやLNG需要が急増している。最もエネルギッシュに(供給を)要請してくる国や企業が交渉で有利になるのは世の常だ。供給先も複合的に検討していかなければならない。

 サハリン2のLNG生産ラインを増設しても、既存の第1、第2ライン向けのガス供給が枯渇してしまえば元も子もない。増設の是非を含めた最終的な判断は来年の第1四半期末までに下す予定だ。

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