日ロ経済協力の大きな柱のひとつがエネルギーだ。特に天然ガスをめぐっては様々な共同事業構想も浮上しているが、ロシアは日本市場を含めたアジア戦略をどのように描いているのか。国営天然ガス会社「ガスプロム」のアレクサンドル・メドベージェフ副社長にサンクトペテルブルクで話を聞いた。

アレクサンドル・メドベージェフ氏
ロシア最大の国営天然ガス会社「ガスプロム」副社長。モスクワ物理工科大学卒。2002年から同社経営陣に参画し、主に輸出部門を担当。1955年8月生まれ、極東サハリン州出身。63歳。

北東アジアでは韓国と北朝鮮の融和が急速に進み、南北とロシアの鉄道連結構想とともに、朝鮮半島を縦断する天然ガスパイプライン敷設構想が再び取り沙汰されるようになってきた。具体的な進展はあるのか。

アレクサンドル・メドベージェフ氏(ガスプロム副社長):南北関係が良くなっていることは当然、世界政治のプラス要因だ。エネルギーを含めた様々な国際協力を進める条件整備にもつながる。ロシアから朝鮮半島を縦断して韓国に至るガスパイプラインを敷設する案はかなり以前からあった。南北関係が良くなるとこの構想がにわかに浮上し、逆に関係が悪くなると立ち消えになった。

 ここにきて南北関係が好転しているので、ガスプロムも再びこの計画の検討を開始することを決めた。第1段階として技術的な問題や採算性の調査から始める必要がある。当社だけでなく、北朝鮮や韓国も交えた投資計画も練らなければならない。ようやく実現の可能性が芽生えてきたが、今は第1段階に入るための準備の段階だ。まずは韓国と北朝鮮が主体的に動かなければ始まらない。

 朝鮮半島縦断パイプラインは事前の大まかな分析では、他のパイプライン計画と比べ、経済的にかなり利益の見込まれるプロジェクトだ。ただし、北朝鮮にどれだけの量のガスをどういう価格で供給するのかといった多くの問題がある。北朝鮮は韓国と比較して圧倒的にガスの使用量が少ないし、支払い能力の問題もある。まずは技術的な問題とともに、経済性や採算の問題を詰めなければならない。それが可能になる政治環境が芽生えるよう期待している。

南北とロシアの間で準備段階の協議は始まっているのか。

メドベージェフ氏:まだ2国間の接触があるだけだ。北朝鮮か韓国かは言えない。本格的な交渉が始まれば明らかになるだろう。パイプライン構想が実現すればアジア太平洋地域の安定に大きく寄与する。まずは北朝鮮の非核化が政治的に進展し、日本や韓国にとっての脅威が取り除かれるよう願っている。

日ロ間ではサハリンと日本を結ぶ天然ガスパイプライン構想があるが、その進捗状況はどうか。

メドベージェフ氏:パイプラインの敷設がどの程度現実的か、日本にどの程度ガス需要があるのかを探るべく、日本側との話し合いを何度か行った。日本側の交渉窓口となっている(独立行政法人の)石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)とは相互協力のための対話も続けている。ただ、まだ本格的な事業化調査に着手する段階には至っていない。

 この構想実現の是非を占う決定的な要因は日本のエネルギー政策だ。日本が将来、エネルギー源としてどの程度のガス需要を見込むのか次第だ。経済産業省は現時点では相当量を石炭で賄おうとしている。しかし、日本は石炭の生産国でもないのに、なぜ石炭火力発電の比率が高いのか。環境問題を含めて十分に理解できる説明を聞いたことがない。欧州では石炭の比率を大幅に減らしている。日本の石炭火力発電の比率がせめて15%に低下するようなら、構想実現の道が開けるだろう。ただし、あくまでも日本の問題だ。ボールは日本側にある。