ロシアが米国に経済制裁を課すことができない事情

 一連の経緯はそもそも、オバマ政権(当時)が昨年末、米大統領選へのサイバー攻撃を理由に米国に駐在していたロシアの情報機関職35人を追放したのが発端だ。だが、ロシアが米外交官の大幅な削減を要求したきっかけは、トランプ政権下で対ロ経済制裁の強化が打ち出されたことにあった。ロシアにしてみれば、同じく経済分野で対抗する方法もあったわけだ。

 だが、いまやロシアの経済規模は米国の約15分の1に過ぎない。ロシアの今年上半期(1~6月)の国別の対外貿易をみても、米国との貿易額は、最大の貿易相手国である中国との貿易額の4分の1程度に過ぎない。経済分野で報復措置を打ち出そうとしても、その影響は極めて限定的と判断せざるを得なかった。政権内ではロシアと取引のある米国のエネルギー産業を制裁対象にする案が浮上したものの、自らの首を絞めかねないとして却下されたという。

 こうした中、米国に大きな打撃を与える対抗策ということで米外交官の削減が浮上したようだ。もっとも、「同等」の原則まで持ち出して「755人」(プーチン大統領)もの大量削減を打ち出した裏には、来年3月の大統領選挙を見据えたクレムリンの強い意向が働いたとされる。どういうことか。

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