
「制裁は非生産的で意味がない。とくにロシアのような国に対してはそうだ」――。8月22日、黒海沿岸の保養地ソチで開いたフィンランドのニーニスト大統領との会談後の共同記者会見。プーチン大統領は米トランプ政権が続々と打ち出している対ロ制裁措置を厳しく批判した。
トランプ、プーチン両大統領は7月16日、フィンランドの首都ヘルシンキで実質2回目となる会談を開き、関係改善への意思を首脳間で確認したばかりだ。しかし、その後も米国による対ロ制裁圧力は続き、8月3日には米財務省が北朝鮮の違法な資金取引に関与したとして、ロシアのアグロソユーズ商業銀行などを制裁対象に加えた。
さらに8月8日、こんどは米国務省が米国の安全保障に関わるモノや技術の輸出を禁じることなどを盛り込んだ対ロ制裁を新たに発動すると発表した。こちらは今年3月、英国で起きた神経剤を使ったロシア元情報機関員の暗殺未遂事件を受けたもので、27日に正式に発動された。
米国務省は「ロシア政府が化学兵器を使用した」と断定し、新たな追加制裁を決めた。約3カ月以内にロシアが化学・生物兵器を使用しないと確約して国連などの査察に応じない限り、さらに厳しい措置に踏み切るという。プーチン大統領の発言は、こうした米国の制裁圧力に反発したものだ。
プーチン大統領は、ヘルシンキでのトランプ氏との会談に関しては「有益だったと前向きに評価している」と語る。そのうえで米国の制裁は、米大統領の立場だけでなく「いわゆるエスタブリッシュメント」の意向が反映されていると指摘。ロシア批判の急先鋒(せんぽう)となっている米国の議会勢力や主要メディアなどを暗に非難するとともに、「こうした政策には将来性がない」と彼らがいずれ自覚し、通常の協力を始められるように期待すると述べている。
ヘルシンキでの首脳会談開催を受けて、米ロ関係に変化がみられるようになるか――。会談直後、ロシアの民間の世論調査会社レバダ・センターと政府系の全ロシア世論調査センターがともに国民の意見を聞いている。いずれも「変化なし」と予測する向きが5割前後を占めたものの、関係が「良くなる」と期待する声も少なからずあった。
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