共同声明を含めた成果文書は発表せず

 会談場所だけではない。今回は国際会議の場ではなく、米ロ首脳会談だけを目的にした「初の本格的な会談」となるだけに、ロシア側は共同声明を発表して相応の体裁を整えるべきだと主張。声明の柱に核軍縮を掲げ、2021年に期限を迎える米ロの新戦略兵器削減条約(新START)の5年延長を盛り込む案まで打診したとされる。

 ところが結果は周知の通りだ。トランプ、プーチン両大統領による会談は、会談時間こそ4時間近くに及んだが、共同声明を含めた成果文書の発表はなかった。新STARTの延長を含め、世界の注目を集めるような合意もなかった。

 それでも伝統的な米ロ首脳会談の重みを誇示したかったのだろう。会談後の共同記者会見では、プーチン大統領が「我々は巨大な核大国として、世界の安全に特別な責任を負っている」と表明。米ロの核軍縮に向けて具体的な提案をしたと述べるとともに、両首脳が国際テロとの戦い、シリア情勢や北朝鮮、イランの核問題など様々な懸案を話し合ったと強調した。

 ところが米国人記者の質問は米大統領選へのロシアの介入疑惑に集中し、共同記者会見も大半をこの問題に割かざるを得なかった。首脳会談の直前、米国でロシアゲート疑惑を捜査するモラー特別検察官が、ロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)に所属する12人を選挙介入の疑いで連邦大陪審に起訴したことも大きく影響した。

 「プーチン大統領は2016年の米大統領選に全く介入していないという。トランプ大統領、あなたは米司法当局とロシアのどちらを信用するのか」――。記者会見ではこんな質問まで飛び出した。しかも、トランプ大統領が「プーチン大統領は今日、非常に強い調子で否定した」と返答して事実上、ロシアに軍配を上げたことから、米国内で激しい批判を浴びてしまった。

 ロシアによる選挙介入疑惑は米国では大きな関心事だけに、プーチン大統領も無視できない。共同記者会見では冒頭演説で「トランプ大統領が会談で何度も提起した」と明かすとともに、「ロシア政府は選挙プロセスを含めた米国の内政問題に一度も干渉したことがないし、これからも干渉するつもりはない」ときっぱりと言い切った。

 しかし、介入疑惑をめぐる質問が繰り返されるなか、プーチン大統領も次第にいらだちを抑えられなくなったようだ。疑惑をめぐる様々な話題を自ら持ち出して、激しく反論するようになった。

 例えば、米大統領選で偽情報などを流して民主党のヒラリー・クリントン陣営に不利になるように選挙工作したとして、今年2月に米連邦大陪審がロシア企業3社とロシア人13人を起訴した件。ロシアでレストランを経営する実業家で、「プーチンの料理人」とも称されるエブゲニー・プリゴジン氏や、同氏傘下の企業が起訴されたが、プーチン大統領は「彼らはロシア政府の代表者ではない」と一蹴した。

 逆に、「米国にはどこでも介入する億万長者が山ほどいる」と指摘。一例として米著名投資家のジョージ・ソロス氏を挙げ、「果たして彼らは米政府の立場を代弁していると言えるのか。個人の立場でしかないはずだ」と反論した。