パイプライン建設が大幅に遅れている

 ガスプロムは通常、「東ルート」と呼ばれるこの新パイプライン計画を「シベリアの力」と命名。当初は中国からガス代金の前払いの形で融資を受け、パイプラインを新設する予定だった。しかし、融資条件などで折り合いが付かず、結局は自力での建設に踏み切った。ただし、その後も原油・天然ガス市況の急落によって採算性の問題なども浮上し、パイプラインの完工は大幅に遅れるのではないかとの観測が大勢だった。

 実際、2014年9月からパイプライン建設に着手したものの、これまでに完成した距離は約800キロメートル。対中輸出を開始するには最低限、当面の供給を予定するチャヤンダのガス田から中ロ国境のブラゴベシェンスクまで2156キロメートルのパイプラインを敷設しなければならないが、建設着手から3年近くたつのに、その半分も完成していない。

 それにもかかわらず今回、ガスプロムとCNPCは2019年12月の供給開始を最終決定したわけだ。しかも両社のトップはプーチン大統領と習主席が見守る中で文書に署名しており、政府間の正式な合意となった。ガスプロムはすでに今年の「シベリアの力」向けの投資予算を大幅に増やしているものの、パイプライン建設を急ピッチで進めなければならなくなったといえる。

ロシアは巨大な中国のガス市場を何としても押えたい

 ロシアがそこまでして対中ガス輸出に力を入れるのは、中ロの絆をさらに強める狙いに加え、巨大な中国のガス市場を押さえたいという思惑がある。ガスプロムなどによれば、中国のガス需要は年々急増しており、2016年は約2100億立方メートルに達したという。

 ロシアにとって天然ガスの主要な輸出先は欧州市場だが、ウクライナ危機をきっかけに欧州との関係はぎくしゃくしつつある。欧州向けのガス輸出が将来的に先細りする懸念も浮上しつつあるなか、中国を欧州に代わる有望な輸出市場と見込んでいる面もあるようだ。

 現にロシアはウクライナ危機以降、天然ガスの売り込みで中国に大攻勢をかけている。今回、供給開始の日程を固めた「東ルート」のほかにも、西シベリアのガスを中国北西部に大量供給する「西ルート」も打診し、2015年5月には中ロ間で基本合意書も交わしている。ただ、北東部への供給を重視したい中国側の思惑などもあり、「西ルート」の交渉は難航しているのが実情だ。

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