通算4期目に入ったロシアのプーチン政権がついに、国民に痛みを強いる経済改革に乗り出した。年金の受給開始年齢の引き上げだ。中高年者層を中心に早くも反発の動きが広がるなか、プーチン大統領はこの難局をどう乗り切ろうとしているのか。

ワールドカップ開幕の前日にFIFA総会でスピーチするプーチン大統領(写真=ユニフォトプレス)

 「ロシアで初めて開かれる壮大なスポーツイベントだ。我々は非常に喜ばしく思っている」「すべてのチームが成功を収め、ファンの皆さんに忘れ得ぬ感動を与えるよう期待する。ロシアにようこそ」――。6月14日、首都モスクワのルジニキ・スタジアム。プーチン大統領はサッカーのワールドカップ(W杯)ロシア大会の開幕式に出席し、誇らしげに歓迎の辞を述べた。

 ロシア社会が世界的なスポーツの祭典の自国開催に盛り上がるなか、どさくさにまぎれて国民の不満を抑えようとしたのだろうか。ロシア政府がW杯の開幕式の当日、国民に大きな衝撃を与える発表をした。長年の懸案だった年金の支給開始年齢の引き上げを打ち出したのだ。

 「年金システムの変更はかなり以前から差し迫っていた課題で、不可避のものだ。システムを変更しなければ我々は前にも進めないし、人々の生活や社会保障の向上、さらには経済発展も望めない」。この日開かれた政府会議。会議を主宰したメドベージェフ首相は年金制度改革の必要性を強調した。

 ロシアでは現在、年金の受給開始年齢が男性は原則60歳、女性が同じく55歳となっている。これを来年以降、1年ごとに半歳ずつ引き上げ、男性は10年かけて最終的に65歳、女性は16年かけて最終的に63歳にしようというのが政府の年金制度改革案の骨子だ。

 今の年金制度はソ連時代の1930年代に設定された。当時は国民の平均寿命が約43歳で、女性55歳、男性60歳という年金の支給開始年齢よりも格段に短かった。ところが現在は平均寿命がおよそ73歳まで上昇しており、このままでは早晩、年金財政の破綻が避けられなくなっている。

 年金制度改革はメドベージェフ首相が指摘しているように、持続的な経済成長を達成する上でも欠かせない。ロシアは深刻な生産年齢人口の減少に悩んでおり、労働力の確保が喫緊の課題となっているからだ。

 年金の受給開始年齢が引き上げられれば必然的に、本来は年金生活入りするはずだった人々の就労期間が延びるとみられる。経済発展省の試算によると、政府案通りに年金制度改革を実施すれば、改革を行わないシナリオと比べて、2019年には30万人、2024年には180万人も雇用者数が増えるという。

 だが、プーチン政権は国民に痛みを強いる改革を長らく控えてきた経緯もあり、中高年を中心に年金制度改革への反発はかなり根強い。