プーチン大統領の政策は「無条件で正しい」

 制裁対象には含まれなかったが、トルコはもともと天然ガス需要の5割以上をロシアに依存している。両国間ではロシア産の天然ガスをトルコ経由のパイプラインで欧州に供給する「トルコストリーム」計画が進んでいたが、撃墜事件後は交渉が完全にストップするなど、様々な分野に影響が広がっていた。

 もちろん、経済制裁は双方に痛みを伴う。プーチン政権の強硬措置によって、ロシア国民は最も人気の高かった海外旅行先を奪われ、日常生活でもトルコ産の野菜や果物を調達できなくなったわけだ。それでもロシア社会で不満の声はほとんど聞かれない。

 政府系の全ロシア世論調査センターが今年2月に実施した世論調査では、実に78%が「トルコの政権が撃墜事件で公式謝罪するまで、いかなる妥協もすべきではない」と回答したという。また、独立系のレバダ・センターが今年5月に実施した世論調査では、ロシアに対して非友好的で敵対意識を持っている国として、米国、ウクライナに続いて3位にトルコがあげられた。

 プーチン大統領はこの間、記者会見などあらゆる場を使ってトルコの非を国民に訴えた。昨年12月の年次教書演説では、会場のクレムリン宮殿に撃墜事件で犠牲となったパイロットや兵士の妻を招いて黙とうをささげた。こうしたパフォーマンスの効果もあったのだろうが、プーチン大統領の政策は「無条件で正しい」と多くの国民が信じているのが今のロシア社会の現実なのかもしれない。

 さて、ロシアとトルコは首脳間の〝和解〟を受け、今月1日にはラブロフ外相とチャブシオール外相がソチで会談した。トルコ側によると、8月中にもプーチン大統領とエルドアン大統領がソチで直接、首脳会談を開く可能性があるという。名実ともに関係修復に向かう道筋が整いつつあるようだ。

 そんな折も折、トルコでは最大都市イスタンブールの国際空港で6月28日、多くの犠牲者を出した自爆テロが起きた。実行犯は旧ソ連の出身者で、一人はロシア出身のIS幹部だったとの情報もある。ロシアとトルコの関係はやはり一筋縄ではいかないのか。偶然とはいえ、そんな予兆も感じさせるテロ事件となった。