エルドアン大統領がプーチン大統領に送った書簡

 そのロシアとトルコの〝冷戦〟が、ようやく雪解けを迎える見通しとなった。

 きっかけはトルコのエルドアン大統領が今年6月27日、プーチン大統領に送った書簡だった。ロシア大統領府の発表によると、書簡はまず「トルコにとってロシアは友人であり、戦略的なパートナーだ」と指摘。昨年11月のロシア軍機の撃墜は全く「故意」ではなかったとし、死亡したロシア人パイロットの家族に「深い哀悼」の意を表した。

 さらに「心底から痛みを分かち合う」として、犠牲者の家族に対する補償にも言及したという。書簡の全文は公表されておらず、トルコ側が指摘しているニュアンスとはやや異なるものの、ロシア大統領府はエルドアン大統領がようやく公式的に「謝罪した」と受け止めた。

 書簡を受け取った2日後の6月29日、こんどはプーチン大統領が動いた。自らエルドアン大統領に電話を入れ、まさにその書簡が互いの危機的状況を打開し、再び国際・地域問題に共に取り組み、両国関係を発展させるきっかけとなると高く評価したのだ。電話会談は40~45分にも及んだという。

 実際、プーチン大統領は電話会談の翌日、対トルコ制裁で禁止していた両国間のチャーター便の運航再開を認めるとともに、政府に対してトルコとの貿易、経済関係の正常化に向けた協議に入るよう指令した。撃墜事件から7カ月を経て、ようやく関係修復に動き始めたわけだ。

トルコが経済制裁で被った多大な損失

 ロシアとトルコはともに強権の大統領が率いる。それだけに「謝罪」の有無をめぐる対立は、プーチン大統領とエルドアン大統領の意地の張り合いともいわれた。結局、エルドアン大統領が折れ、トルコに対する過剰なほどの強硬外交を貫いたプーチン大統領が勝利した形となった。

 トルコはここにきてロシアだけでなく、イスラエルとの関係改善にも動いており、国際的な孤立や経済的な苦境を打開するのが狙いだったというのが定説だ。ロシアの有識者の間では、英国の国民投票で欧州連合(EU)からの離脱が決まり、トルコの長年の念願であるEU加盟がさらに遠のいたことから、経済的なつながりの深いロシアにすり寄ったと解説する向きもある。

 確かに、トルコが経済制裁で被った損失はかなり痛手だったようだ。トルコ経済の柱のひとつである観光産業は制裁前、ロシアからの観光客に主に依存していた。ロシア経済紙コメルサントによると、2014年にトルコを訪問したロシア人観光客は約328万人に上った。ロシア人の海外旅行先ではトップの人気で、全体の2割を占めていた。

 トルコの建設業者はロシアの各地で活発に活動していた。また、ウクライナ危機に伴う欧米の対ロシア制裁に対抗し、ロシア政府がEUからの食料品輸入を原則禁止して以降は、トルコによってロシアは野菜や果物の主要な輸出先でもあった。対トルコ制裁が発動される直前、ロシア市場で出回っていたトマトの25%はトルコ産ともいわれた。

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