「トルコは我がパイロットを背後から撃った」

 これに対してロシア側は「領空侵犯」はなかったと完全に否定。謝罪と賠償を要求したが、トルコ側は拒否して非難の応酬を繰り返した。なかでも目を引いたのが、プーチン大統領の度をこしたような執拗なトルコ批判だった。

 「トルコは我がパイロットを背後から撃った。それにもかかわらず自らの行動を偽善的に正当化し、テロリストの犯罪を隠蔽しようとしている」

 プーチン大統領は「謝罪」をしないトルコを痛烈に非難するだけでなく、テロリストがシリアで略奪した原油の密売に手を染め、結果的に彼らに傭兵や武器調達の資金を与えているのはトルコに他ならないと断じたのだ。

 恐らく、大統領の指示に基づくものだろう。ロシア国防省はタンクローリーが映っている衛星画像などを公開し、エルドアン大統領の一族がシリア、イラクのIS支配地域で原油を違法に密輸入している〝証拠〟だと指摘したこともある。

 それだけではない。プーチン政権はトルコに対する厳しい経済制裁まで発動した。ロシアでのトルコ系企業の活動を制限するとともに、トルコ旅行のためのチャーター便やトルコツアーの販売停止、トルコからの野菜、果物など食料品の輸入禁止措置まで打ち出し、経済的な圧力も一気に強めたのだ。両国関係は完全にこじれてしまった。

 撃墜事件では、ロシア機に搭乗していたパイロットと救出活動に当たった兵士が犠牲になった。プーチン政権がここまでトルコに強硬に対処したのは、シリアでの軍事介入に国内世論が否定的になるのを恐れたとの見方もある。しかし実際は、「謝罪」をめぐる国際的なメンツの問題のほうが大きかったようだ。トルコが事件直後、当事者であるロシアに通報せず、北大西洋条約機構(NATO)に対応策を打診したことも火に油を注ぐ結果になったとみられる。

次ページ エルドアン大統領がプーチン大統領に送った書簡