ロシアにとっての「対EU」政策の難しさ

 EUの対ロシア制裁との関連については、先でも触れたように、プーチン大統領は大きな期待はしていないようだ。ロシアの銀行の資金調達、石油企業への技術支援などを制限したEUによる最も厳しい制裁措置は7月末に期限を迎えるが、そのまま来年1月末まで延長される見通しだ。

 とはいえ、プーチン大統領は5月にはギリシャを訪問した。6月にはサンクトペテルブルクで開いた国際経済フォーラムに欧州委員会のユンケル委員長、イタリアのレンツィ首相、フランスのサルコジ前大統領らを招き、関係改善の必要性を訴えたばかりだ。

 ロシアとEUの間では制裁問題に限らず、例えばロシア産の天然ガスを欧州南部にパイプラインで供給する「サウスストリーム」計画が中止に追い込まれるなど、関係が大きく冷え込んでいる。ただ、EU諸国でもイタリア、ギリシャなどのように、主に経済的な利害からロシアとの早期の関係改善を求める国々は少なくない。

 英国の離脱騒動をきっかけにEU内の足並みが乱れるようなら、プーチン政権は対ロシア政策での結束を揺さぶる好機と捕らえ、早期の制裁緩和や経済協力の強化を実現すべく切り崩しに動くとみるべきだろう。今後の情勢次第では「ロシアを利する」可能性は十分にあるわけだ。

 もっともロシアの専門家の間では、英国のEU離脱がもたらす負の影響を懸念する声も根強い。国際問題の専門家フョードル・ルキヤノフ氏は「欧州の手綱を締めるため、北大西洋条約機構(NATO)の役割が高まる恐れがある」と警戒する。英国のEU離脱が逆に刺激となってNATOが一層強化され、ひいては米国の影響力が強まるというシナリオだ。米国が加わっているNATOの軍事力強化はプーチン政権が最も嫌う構図である。

 吉と出るのか、凶と出るのか――。プーチン政権にとって英国の選択を受けた対EU政策のかじ取りは、もろ刃の剣なのかもしれない。