北朝鮮労働者はロシア経済で重宝されている

 そして最後に、経済的な利益。ロシアは近年、北朝鮮からの労働者受け入れを積極的に進めている。その数は5万人前後に達するとされる。極東を中心に建設、道路整備、木材伐採などに携わる人材が不足するなか、賃金が安く、真面目で勤労意欲の高い北朝鮮労働者は重宝されているようだ。

 極東開発の一環として、北朝鮮に関心を強める動きもある。ロシアは中国などアジア向けの石炭輸出拠点として、北朝鮮・羅津港の埠頭の長期利用権を取得。埠頭を改修したほか、羅津とロシア極東のハサンを結ぶ鉄道も改修した。

 さらにロシアには、朝鮮半島を縦断する鉄道を建設してシベリア鉄道と連結する構想、ロシア産の天然ガスを輸送する南北縦断ガス・パイプライン構想、北朝鮮を経由する広域電力供給網といった巨大なプロジェクト構想もある。

 すでに約110億ドルに上る北朝鮮の対ロ債務のおよそ9割を帳消しにし、残りを北朝鮮のインフラ整備に宛てるとするなど、北朝鮮への投資を進めやすい環境づくりも進めている。折から、韓国で北朝鮮との融和路線を掲げる文在寅(ムン・ジェイン)大統領が就任したこともあり、あの手この手で北朝鮮への投資の機会を探っているのは間違いない。

 こうした様々な思惑を抱えたロシアの動きは、万景峰号による定期航路の開設にとどまらず、今後の北朝鮮情勢の波乱要因になりそうだ。

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