解決の糸口が見いだせないクリミア問題

 ウクライナと鋭く反目するクリミア問題では、ロシアでも国際的解決への期待が盛り上がった時期があった。昨年の米大統領選で米ロの良好な関係づくりに意欲を示したトランプ氏が「クリミアの人々はロシアと共にいることを望んでいるのではないか」と述べ、併合を容認するような立場を示していたからだ。

 ところが、米大統領選で勝利したトランプ氏の就任後も、米ロ関係改善の兆しはみえない。それどころか、最近はシリアのアサド政権による化学兵器使用疑惑をめぐって米ロが激しく対立。現在の米ロ関係は「史上最低かもしれない」と、トランプ大統領が自ら評するほど冷え込んでしまった。

 当のクリミア問題についても、米国務省は3月中旬、「クリミアはウクライナの一部だ」とする声明を発表。ロシアによるクリミア併合を非難するとともに、ロシアがこの半島をウクライナに返還するまで、対ロ経済制裁は継続されると強調した。クリミア問題でトランプ政権を懐柔し、それを突破口に現状維持のままで決着させようとするロシア側のシナリオは完全についえたといえそうだ。

 ウクライナ情勢をめぐっては、東部地域で続く政府軍と親ロシア派武装勢力による紛争も一向に解決のメドが立たない。泥沼の戦闘によってすでに約1万人もの死者が出ているが、和平プロセスを規定した2015年2月のミンスク合意はほとんど順守されていない。

 ウクライナのポロシェンコ政権は親ロ派の後ろ盾となっているロシアを批判し、ロシアのプーチン政権は東部地域への自治権付与などの履行義務を果たそうとしないウクライナ側に非があると主張する。

 互いに非難合戦を繰り広げる両国だが、もともとは共にソ連を構成した共和国で、しかもスラブ系が主体の国家でもある。和解への道は完全に閉ざされてしまったのだろうか。

 話をユーロビジョンに戻すと、昨年の大会では注目すべき結果もあった。視聴者による投票をみると、ウクライナではロシア代表のラザレフ氏の人気が1位、ロシアでもウクライナ代表のジャマラさんが2位だったのだ。互いの国民感情はそれほど冷え切っていないともいえる。

 今年のロシア代表だったサモイロワさんが政治対立を乗り越え、キエフでのユーロビジョンに出場できていれば、反目しあうロシアとウクライナの融和に多少なりとも寄与していたかもしれない。

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